2025/07/03
「ありがとうを伝える旅」記念ポストカード作り 言葉にして届ける感謝が、旅の余韻をあたためる

旅の終わりに、ふと立ち止まって振り返る。「誰に一番感謝したいだろう?」そんな問いを自分に投げかけながら、心に浮かんだ人へ“ありがとう”を伝える一枚をしたためる。風景でも、お土産でもない、心からの一言をかたちにする時間──それが「ありがとうを伝える旅」記念ポストカード作りである。

この体験は、旅館やカフェ、文化施設の一角などで実施されており、旅の最後にほんの少し立ち止まる“感謝の整理”として人気を集めている。対象は子どもから大人まで、誰もが自由に書き、描き、思いを込めて一枚のポストカードを完成させていく。

用意されているのは、和紙やクラフト紙に印刷された地域の風景や模様、空白を多く取った余白たっぷりのデザイン。カラーペンや筆ペン、スタンプ、シールなどもそろっており、絵を描くのが得意な人も、文字だけで表したい人も、自分のスタイルで感謝の気持ちを綴ることができる。

親子で参加すれば、子どもは自分で描いたイラストに「じいじへありがとう」「おかあさんいつもありがとう」など、素直な気持ちを添えることができる。日頃は照れくさくて言えない一言も、旅の余韻の中で書くことで、自然とやさしい言葉があふれてくる。親はその言葉に目を細めながら、自分も誰かに伝えたい感謝をそっと書き始める。

書き終えたポストカードは、そのまま封筒に入れて手渡しするのもよいし、施設から投函してもらうこともできる。「あの人のもとに、旅先から感謝が届く」──その時間差のある贈り物は、書いた本人にも、受け取る相手にも、じんわりと心をあたためてくれる。

外国人旅行者にとっても、この体験は“書くこと”を通じて文化にふれる貴重な機会になる。英語、中国語、韓国語など多言語での記入も歓迎されており、宛名の書き方やメッセージ例も備えられているため、言葉に自信がない人でも安心して取り組むことができる。

また、一部の施設では「自分宛て」にポストカードを出すこともできる。旅の中で感じたこと、学んだこと、忘れたくない景色──そうした思いを未来の自分へ向けて書くことで、旅の記憶がより深く心に残る。数日後、あるいは一か月後、自宅のポストに届いた自分の言葉に、もう一度旅の空気がふわりと戻ってくる。

このポストカード作りが大切にしているのは、豪華なデザインや華やかな仕上がりではない。むしろ、ひとつひとつの線や言葉が、どれだけ“自分の気持ち”から出てきたものかということ。だからこそ、どんなに不器用な字であっても、どんなにシンプルな言葉であっても、そのカードには強い想いが宿る。

観光地をめぐり、たくさんの写真を撮り、美味しいものを味わったあと。旅の締めくくりに「ありがとう」を書くという選択は、自分と旅との関係を静かに結び直すような、やさしい儀式でもある。

「楽しかったよ、ありがとう」その一言が、旅を“思い出”から“贈り物”へと変えてくれる。