山陰地方には、日本の原風景や神話、静かな絶景が今も息づいている。なかでも出雲から鳥取にかけてのエリアは、神々の伝説に彩られた史跡と、自然が織りなす荘厳な景観が連なる“神秘の道”。大阪から鉄道や車でアクセスできるこのルートは、観光だけでなく心を整える旅としても魅力的だ。ここでは3泊4日でめぐる、出雲〜松江〜大山〜鳥取の“山陰横断ルート”を提案する。
【1日目】大阪発 → 出雲大社:ご縁と神話に浸る
新大阪から特急「やくも」や飛行機を利用して出雲市へ。到着後はそのまま出雲大社へ直行。縁結びの神・大国主大神を祀るこの神社は、日本最古級の歴史を持ち、“神在月”の舞台としても知られる。荘厳な本殿、巨大なしめ縄、松並木の参道を歩くだけで、心がすっと静まっていく。
参拝後は、神門通りで出雲そばやぜんざいなど地元グルメを味わいながら散策。宿泊は出雲大社周辺の旅館や、温泉が楽しめる出雲湯村温泉へ。
【2日目】出雲 → 松江:水と城の美に触れる
朝の清々しい空気の中、松江市へ移動。国宝・松江城の天守に登れば、城下町と宍道湖の眺めが広がる。城周辺の武家屋敷通りや、茶の湯文化が息づく「松江歴史館」もゆっくり巡りたい。
午後は堀川遊覧船に乗って、水の都・松江を水上から楽しむ。ゆっくりと流れる船のリズムとともに、石垣や柳並木が心をほどいてくれる。夕方には宍道湖畔へ移動し、湖に沈む夕日を眺めながら旅の余韻にひたる。宿泊は湖畔の温泉宿で、地元食材を使った会席料理に舌鼓を。
【3日目】松江 → 大山 → 皆生温泉:山と海の贅沢を一度に
3日目は、米子経由で中国地方屈指の名峰・大山へ。夏はトレッキングや自然散策、秋は紅葉、冬はスキーと、季節ごとの魅力が詰まっている。登山が難しい場合でも、大山寺や大神山神社奥宮への参道は比較的歩きやすく、神域の空気に包まれる体験ができる。
午後は車で30分ほどの皆生温泉へ。海辺に湧く珍しい温泉地で、日本海を望む露天風呂と山陰の海の幸が楽しめる。温泉街にはカフェや土産店も並び、静かながらも充実した滞在が叶う。
【4日目】皆生温泉 → 鳥取砂丘 → 大阪帰着:砂と空の絶景で締めくくる
最終日は早めに出発し、山陰観光のラストを飾る鳥取砂丘へ。日本最大級の砂丘で、砂に刻まれる風紋や“馬の背”からの景色はまさに圧巻。希望があれば、サンドボードやらくだ乗りといったアクティビティも体験可能。
隣接する「砂の美術館」では、砂で作られた彫刻作品が季節ごとにテーマを変えて展示されており、芸術と自然の融合に心を打たれる。
午後は鳥取駅から特急スーパーはくとで大阪方面へ。夕方には帰着し、4日間の“神秘と静寂の旅”が締めくくられる。
神話と自然が織りなす、山陰だけの時間
出雲の神域、松江の水辺、大山の霊峰、鳥取の砂丘──山陰には派手さはないが、ひとつひとつが深く記憶に残る。3泊4日で巡るこのルートは、旅の意味を見つめ直すような、静かで豊かな時間をもたらしてくれる。