秋になると九州・四国は、山々が赤や黄に染まり、歴史や自然が調和した絶景が広がる。温暖な気候を活かし、紅葉の見頃は例年11月上旬から下旬。各地で趣の異なる風景が楽しめる紅葉名所を厳選して紹介する。
まず九州では、大分県の耶馬溪が紅葉の代名詞ともいえる名所。奇岩が連なる渓谷に色づく木々が重なり、水面に映る風景はまるで一幅の絵画。深耶馬溪の「一目八景」は、数多くの名所が一望できる絶景スポットとして知られている。
福岡では秋月城跡が人気。黒門と石垣、紅葉の赤が美しいコントラストを生み出し、歴史的風情が漂う城下町の中でゆったりとした時間が流れる。同じく熊本の五家荘も、渓谷や吊橋と紅葉が織りなす秘境のような雰囲気を持ち、紅葉狩りの隠れた名所として注目されている。
長崎では雲仙温泉周辺の仁田峠が紅葉スポットとして有名で、ロープウェイから眺める雲仙岳と紅葉のパノラマは圧巻。鹿児島の霧島神宮も、荘厳な社殿とモミジの赤が映える、静けさに包まれた聖域となっている。
四国に目を移せば、徳島県の祖谷渓は切り立った渓谷に橋が架かるドラマチックな景観。吊橋と紅葉の組み合わせは訪れる者を惹きつけてやまない。愛媛県では石鎚山系の面河渓が、透明な流れと岩肌に広がる紅葉で知られ、空気の澄んだ静かな山間で自然の息吹を感じられる。
香川の寒霞渓(小豆島)は、ロープウェイから眺める紅葉と瀬戸内海のコントラストが特徴的。秋の柔らかな光に照らされた紅葉は島旅のハイライトとなる。高知県の安居渓谷も、エメラルドグリーンの清流と赤い葉の対比が美しく、足を止めて眺めたくなる景色が広がっている。
いずれの場所も、紅葉だけでなく地形や歴史との調和が美しさを際立たせている点が魅力。秋の九州・四国では、単に色を楽しむのではなく、景観の奥にある土地の物語を感じることができる。豊かな自然と静けさのなかで、自分自身と向き合うような旅がここにはある。