世界中の富裕層が投資対象を見直す中、ある明確な動きが起きている。
それは、シンガポールの富裕層が、日本・東京の不動産に静かにシフトしはじめているという事実だ。
かつてはロンドン、ニューヨーク、香港といった都市が「王道」とされていたが、いまや東京は「静かなる優等生」として、新たな資産防衛と分散の拠点として注目を集めている。
なぜ今、シンガポールの投資家たちが東京を選ぶのか?
その理由は、表面的な価格やトレンドではなく、制度・安定・実需という極めて現実的な価値にあった。
■ 税金の“重さ”がきっかけだった
シンガポールでは、2023年以降に富裕層向けの不動産取得税(ABSD:Additional Buyer’s Stamp Duty)がさらに引き上げられた。
特に外国人投資家に対しては最大60%の課税が課されることになり、実質的に「投資はするな」というメッセージに近い状況となっている。
この税制改正により、多くの投資家は**「他にもっと効率の良い市場はないか?」**と目を向けるようになった。
その先にあったのが、比較的低税で透明な制度を持つ日本の不動産だったのだ。
■ 東京は“買えるだけでなく、持ちやすい”
日本は、不動産所有に関して外国人への制限がほとんどない。
- 購入にビザは不要
- 法人名義でも保有可能
- 固定資産税が非常に安価(評価額の0.1〜0.3%前後)
- 所得税も分離課税で明確、節税スキームも構築しやすい
- 空き家税などの“富裕層狙い撃ち課税”が存在しない
これらの条件は、規制の厳しい国々の投資家にとって、**「珍しく持ちやすい不動産市場」**として高く評価されている。
■ “自用+投資”のバランスが取れている
シンガポールの投資家にとって、東京の魅力は「投資価値」だけではない。
実際に何度も訪日経験があり、日本に対して文化的親近感を持っている人が多いため、“住みたくなる国”としての好感度が極めて高い。
- 家族旅行で何度も訪れている
- 子どもをインターナショナルスクールに通わせたい
- 日本食が好き、清潔で治安が良い
- いずれリタイア後に短期滞在したい
つまり、「投資対象」であると同時に、「生活の選択肢」としても優れている。“利回り”と“感情価値”を両方満たす都市として、東京は他に類を見ないポジションにある。
■ キャピタルよりも“安定”を重視するシフト
近年のシンガポール富裕層は、過去のように「キャピタルゲイン(売却益)で勝つ」よりも、「安定した保有による資産防衛」を重視する傾向が強い。
東京の都心マンションは:
- 土地が限られており、供給が極端に少ない
- 賃貸需要が安定しており、流動性も高い
- 管理体制が優れ、資産価値が劣化しづらい
- 長期保有で節税・相続対策にもなる
これらの要素は、富裕層が求める“長く付き合える資産”として非常に理にかなっている。
■ 東京は“買われすぎていない”という魅力
もう一つ、投資家心理として見逃せないのが、**“東京はまだ買われすぎていない”**という点だ。
ニューヨーク、ロンドン、香港などは、すでに外国人資金が大量に流入しており、「誰が買っても儲かる時代」は終わっている。
一方で東京は、過去10年でゆるやかに価格は上昇しているものの、**それは実需と再開発に支えられた“健全な上昇”**であり、バブル的な危うさがない。
つまり、「これからも買えるし、売れる」市場として、富裕層の“堅実な投資先”として理想的なのだ。
■ まとめ──“トレンド”ではなく“本質”で選ばれている都市
シンガポールの富裕層が東京に注目する理由は、決して一時的な流行ではない。
それは、世界中の不動産市場を比較したうえで、「制度」「保有性」「文化的魅力」のすべてを満たす都市として選ばれた結果だ。
派手さではなく、誠実さ。短期利益ではなく、長期信頼。
そうした価値観を持つ富裕層にとって、東京という都市は今、まさに“最も合理的で、最も美しい選択肢”になりつつある。