日本を初めて訪れたとき、すぐに感じたのは「また来たい」という気持ちだった。けれど、それがなぜなのか、はっきりと言葉にできなかった。ただ楽しかった、美味しかった、きれいだったという以上に、心のどこかに「戻りたくなる」感覚が残った。そして何度か訪れるうちに、ようやくその理由が少しずつ見えてきた。
日本には、驚くほど“心地よい当たり前”がある。電車が時間通りに来る、道がきれい、店員が丁寧、街が静か。それらは一見目立たないけれど、確実に旅のストレスを減らしてくれる。旅を繰り返すうちに、その“安心感”こそが日本の魅力なのだと気づいた。
観光地としての魅力ももちろんある。京都の寺、東京の街並み、北海道の自然、沖縄の海。それぞれの地域がまったく異なる表情を見せ、毎回違う旅ができる。何度訪れても飽きないというより、まだ知らない日本に出会えるから、リピートしたくなるのだ。
食もまた、日本を何度も訪れたくなる理由のひとつ。寿司、ラーメン、天ぷら、うどん。定番の料理だけでなく、地域ごとの郷土料理や、駅弁、コンビニグルメまで、それぞれの味に文化が込められている。しかも、どこで食べても一定以上に美味しいという安心感がある。食に外れがない国というのは、旅人にとってこれ以上ない魅力だ。
人との距離感も絶妙だ。親切なのに押しつけがましくなく、困っていればそっと助けてくれる。必要以上に干渉しないけれど、目配りは忘れない。そのバランスの良さが、旅先でも自分のペースで過ごせる心地よさにつながっている。言葉が完璧に通じなくても、通じ合える安心がある。
それに、日本には“静けさ”がある。大都市でさえ、どこか空気に透明感がある。神社やお寺に限らず、路地裏や公園、電車の中、コンビニの前にすら、落ち着きが漂っている。その静けさの中にいると、自分の呼吸までゆっくりになっていくのがわかる。
季節ごとの変化も、日本をリピートしたくなる理由のひとつだ。春は桜、夏は祭り、秋は紅葉、冬は雪景色。同じ場所でも、季節によってまったく違う印象になる。だからこそ、何度でも訪れてみたくなる。桜の京都と紅葉の京都は、別の町のように見える。そしてどちらにも、行ってよかったと思わせてくれる深さがある。
また、旅を通じて“自分を大切にする時間”を取り戻せる国だと感じた。どこかのカフェで一人でお茶を飲む、神社でゆっくり手を合わせる、駅のホームで静かに空を見上げる。そんな何でもない時間が、とても贅沢に感じられる。それは、せかせかした日常ではなかなか味わえない感覚だ。
日本の魅力は、特定の場所や体験ではなく、国全体に流れている“気配”のようなものかもしれない。それがどこにいても心を落ち着けてくれて、また来たいという気持ちを自然と生み出してくれる。
次の旅先を決めるとき、日本がいつも候補に上がるのは、そういう理由だと思う。一度行っただけではわからなかった魅力が、二度目、三度目の旅で少しずつ見えてくる。そしてそのたびに「もっと知りたい」と思わせてくれる。だから、みんなが日本を何度も訪れるのだと、今ははっきりわかる。
日本は、また行きたくなる国。それは、旅の満足ではなく、旅の余韻が静かに続いているから。次に訪れるときは、前回とは違う季節、違う町、違う自分で、また新しい日本と出会いたいと思っている。