2025/07/03
“スクバ”がパリで売れる日 女子高生グッズが海外で大人気

日本の女子高生が通学に使うバッグ、通称“スクバ”は、今や日本国内だけでなく海外の若者たちの間でも注目を集めている。シンプルなナイロン素材に丸みを帯びたフォルム、肩掛けできる持ち手と、実用性と可愛らしさを兼ね備えたその形は、日本の女子高生という文化の象徴として受け入れられつつある。

“スクバ”とはスクールバッグの略称で、学校指定の鞄として配布されることが多い。無地に近いデザインながら、各自でキーホルダーを付けたり、ストラップやシールで個性を出したりする工夫がなされる。制服と並んで女子高生の日常を彩るアイテムの一つであり、その扱い方にはその人らしさがよく表れる。

海外でこのスクバが注目され始めたのは、SNSやアニメの影響が大きい。日本の学生生活を描いた作品の中で、登場人物が手にするスクバの姿に惹かれたファンたちが、実物を求めて模倣品や中古品を探し始めたことからその人気が広がっていった。とくにアジアや欧米のファッション感度の高い若者たちは、日本の制服文化やスクバを、ファッションアイテムとして新たな視点で捉えている。

パリやニューヨークなどのセレクトショップでは、日本から取り寄せたスクバ風のバッグが販売されるようになり、通学用ではなく普段使いのバッグとして取り入れる動きが出てきている。その使い方は実に多様で、ショッピングバッグとして、ジムバッグとして、また旅行時の軽装用としてなど、ライフスタイルに合わせて自由にアレンジされている。

この現象は、単に日本の物が流行しているという話にとどまらない。スクバには、学生時代の記憶や純粋な日常の象徴としての魅力が詰まっている。堅苦しさのない柔らかいフォルムと、控えめな存在感が、日々を大切に過ごす気持ちと共鳴するのかもしれない。

また、スクバの人気は単なる懐古趣味とは異なる。日本の女子高生が持つイメージ、自由と規律が同居する世界観、制服とのコーディネートなど、そこには独自の美意識とストーリーがある。それを受け取った海外の人々は、自分なりの文脈でスクバを取り入れ、新しい意味を与えている。

スクバが象徴するのは、決して派手ではないが丁寧に積み重ねられた日常である。長年使い続けることで味が出る素材、多少の汚れも思い出として蓄積されていく感覚。その風合いが、使い捨てが当たり前になった現代において、どこか新鮮に映るのだろう。

今やスクバは、学校という限定された場所を超えて、カルチャーのひとつとして世界に認識されつつある。それは、日常の中の非日常を愛する日本らしい感性と、世界の若者たちの自由な解釈とが交差する地点にあると言える。

“スクバ”がパリで売れる日。それは、制服姿で歩く女子高生の姿に、世界が共鳴し始めた瞬間でもある。たったひとつの鞄に込められた日常の物語が、言葉を超えて国境を越えていく。