東京から車で2時間半ほど。関越自動車道を北上し、渋川伊香保インターを降りて山道を抜けると、石段街の風情が漂う伊香保温泉が現れる。群馬県を代表する温泉地として知られる伊香保は、どこか懐かしい時間が流れる街。ドライブ旅行との相性もよく、週末の1泊旅にも最適な目的地だ。
伊香保温泉の象徴とも言えるのが、365段の石段街。両脇には土産店や飲食店、昔ながらの射的場が並び、レトロな温泉街の雰囲気を今に伝えている。石段の途中には共同浴場や足湯も点在し、道中のひと休みにぴったり。階段を登るごとに視界が開け、温泉地ならではの高台の眺めも楽しめる。
この温泉地の特徴は、「黄金の湯」と「白銀の湯」という2種類の源泉を持つことにある。とくに鉄分を含む茶褐色の“黄金の湯”は、体を芯から温めると評判で、独特のにおいと色合いが温泉情緒をより深く感じさせてくれる。
宿泊には、昭和の趣を残すレトロな旅館を選びたい。畳敷きの広い和室、磨き込まれた木製の階段、館内に流れる静かな時間。近年はこうした古き良き温泉宿に再評価の声が高まり、あえて時代の流れに逆らった設えが旅人の心をつかんでいる。なかには、老舗旅館をリノベーションし、ノスタルジーと快適性を両立させた宿も増えている。
夕食には地元群馬の山の幸が並ぶ。上州牛のすき焼きや川魚の塩焼き、季節の野菜を使った煮物など、どれも素朴で滋味深い。囲炉裏を囲んだ食事処や部屋食のスタイルも多く、落ち着いた雰囲気の中でゆっくり味わえる。食後は旅館のラウンジで昔ながらの瓶牛乳や地酒を楽しむのも一興。
翌朝は温泉街を散策したあと、車で10分ほどの「伊香保グリーン牧場」や「榛名湖」へ足を延ばすのもおすすめ。牧場では動物とのふれあい体験やバーベキュー、ソフトクリームなどが楽しめ、ファミリーにもカップルにも人気。榛名湖では四季折々の自然が広がり、ドライブ旅の締めくくりにふさわしい癒しの風景が待っている。
帰路は関越道・渋川伊香保ICから東京方面へ。道中には地元産の野菜や土産が手に入る道の駅も複数あるため、立ち寄って旅の余韻を楽しむのもよい。
伊香保温泉は、都心から気軽に訪れることができ、温泉の魅力と昭和の空気を同時に味わえる貴重な場所。時代に流されない“変わらなさ”が、現代の旅人にとってかえって新鮮に映る。心と身体をゆるめる時間を求めて、週末のハンドルを北へ向けてみてはいかがだろうか。