2025/06/28
原爆ドームと平和記念資料館で“日本の歴史”に触れる1日旅

広島市中心部に位置する「原爆ドーム」と「広島平和記念資料館」は、第二次世界大戦の記憶と向き合い、核兵器のない世界を願う象徴的な場所。日本人として、また世界の一員として「平和とは何か」を静かに考える1日旅は、観光では得られない深い学びと感情をもたらしてくれる。

広島駅から路面電車やバスで約15分。市街地の中心に広がる「平和記念公園」には、まず圧倒的な存在感を放つ原爆ドームが立っている。かつて広島県産業奨励館だったこの建物は、1945年8月6日午前8時15分、原子爆弾が爆心地近くで炸裂したことで全壊しながらも、奇跡的に外壁の一部が残った。戦争の悲劇と人間の尊厳、その両方を無言で訴えかける姿は、時代や国を超えて見る者の心に訴えかける。

ドームの前に立つと、喧騒に包まれた街の中心とは思えないような、張り詰めた静けさが訪れる。目の前にあるのは単なる“遺構”ではなく、数えきれない命と願いが積み重ねられた場所だという実感が、静かに胸に広がる。

そこから歩いてすぐの場所にある「広島平和記念資料館」では、被爆当時の状況を物語る写真や遺品、証言映像などが展示されている。焼け焦げた衣服や時計、遺された手紙――その一つひとつに、無念の記憶と失われた日常が詰まっている。被爆者の視点から語られるエピソードは、教科書では触れきれない“個人の歴史”に目を向ける機会となり、言葉を失うような衝撃と深い思索を誘う。

展示の最後には、「過去を学び、未来に活かす」ためのメッセージが綴られており、核兵器廃絶への願いとともに、来場者一人ひとりに「自分は何を選び、どう生きるか」が静かに問われる。この資料館は、悲劇の記録ではあるが、“希望のための記憶”を共有する空間でもある。

平和記念公園の中には「原爆の子の像」や「平和の鐘」「慰霊碑」など、多くの祈りのモニュメントが点在している。それぞれに込められた意味を感じながら歩く時間は、情報から距離を置き、自分自身の内側に目を向けるような深い感覚へと導いてくれる。

訪問後は、公園近くの穏やかな川沿いやカフェでひと息つきながら、感じたことを自分の中に落とし込む時間も大切にしたい。何かをすぐに言葉にせずとも、その場で感じたことが静かに残る旅となるはずだ。


原爆ドームと平和記念資料館をめぐる1日は、観光という枠を超えて、自分の心に向き合う時間。歴史の重みと、今を生きる自分とのつながりを見つめ直すきっかけとして、一度は訪れておきたい場所である。