2025/06/19
同棲する際の契約名義はどうするのが正解?

カップルが一緒に暮らし始める、いわゆる「同棲」は、人生の大きな転機のひとつである。期待と希望に満ちた新生活のスタートではあるが、賃貸契約における“契約名義”の扱いを誤ると、後々思わぬトラブルにつながる可能性がある。

名義の選び方次第で、家賃の支払い責任、更新・解約手続きの権利、退去時の費用精算などが大きく変わってくる。また、万が一別れることになった場合や、どちらかが先に退去するような状況でも、名義によって取れる対応が異なる。

この記事では、同棲時に考慮すべき契約名義の基本パターンと、それぞれのメリット・注意点を整理し、最適な選び方について実務的に解説する。


名義の基本は「誰が契約者になるか」

賃貸契約書において「契約者」とは、物件の借主として法律的に責任を持つ人物である。名義を持つということは、家賃の支払い義務や契約更新・解約に関する権限も全てその人に集中するということを意味する。

同棲の際の契約名義は、大きく以下の3パターンに分けられる。

  1. 片方だけが契約者となり、もう一人は「同居人」扱い

  2. 2人で連名契約(共に契約者)する

  3. 一方が契約者、もう一方が「連帯保証人」となる

それぞれの特徴とリスクを見ていこう。


パターン1:片方のみが契約者+同居人登録

もっとも多いのがこの形式。1人が契約者となり、相手を「同居人」として契約書や入居申込書に明記する。

メリット

  • 手続きがシンプル

  • 一人分の収入審査で進められるため、ハードルが低い

  • もし別れることになっても、契約者側が住み続けやすい

注意点

  • 契約者以外には法的権限がない(解約・更新は契約者しかできない)

  • トラブル時に同居人側は立場が弱くなる

  • 収入や信用面で契約者側に負担が集中する

この方式を選ぶ場合は、同居人の登録をきちんと行い、管理会社の承諾を得ておくことが大前提となる。無断同居は契約違反となるおそれがある。


パターン2:2人で連名契約

2人ともが契約者となる方式。どちらか一方ではなく、同等の権利と義務を負う形式である。

メリット

  • 契約上の立場が対等

  • どちらかが退去しても、もう一方が契約を引き継ぎやすい

  • 家賃滞納などの責任を2人で共有することになる

注意点

  • どちらかが退去しても、名義を残したままでは責任を負い続ける

  • 契約内容の変更には両者の同意が必要

  • 信用情報や収入状況によっては、どちらかが審査で不利になることも

将来的に結婚を前提としていたり、責任を公平にしたいと考えるカップルに向いているが、関係性に変化があったときの処理が複雑になる可能性もある。


パターン3:片方が契約者、もう一方が連帯保証人

こちらも意外と多い形式。契約者は一人だが、もう一方は「連帯保証人」として契約書に名を連ねる。

メリット

  • 審査に通りやすくなる(2人分の収入や信用を合算できる)

  • 契約者は主導権を持ちつつ、もう一人も法的に責任を共有する

注意点

  • 保証人は住んでいても、契約上の権利がない

  • 契約者が家賃を滞納すれば、保証人に請求が来る

  • 別れたあとでも保証人の義務は残る(解消しにくい)

保証人になる側は、自分の法的責任が契約者と同等であることを理解しておく必要がある。気軽に引き受けると、後々トラブルに巻き込まれる可能性もある。


管理会社への相談と承諾が必要

同棲の際は、契約形態にかかわらず、必ず管理会社または貸主に同居の承諾を得ることが必要となる。たとえ契約者1人で契約しても、実際に2人で住むのであれば、申込時にその旨を伝えておくことが大前提である。

無断同居は、規約違反や契約解除の対象となることもあるため、「黙って住み始める」という選択肢は避けるべきである。


万が一、別れることになった場合のために

同棲は必ずしも永続的な関係を保証するものではない。万が一、関係が解消した場合にトラブルを避けるため、事前に以下のようなポイントを2人で共有しておくと安心である。

  • 解約や退去時に、どちらがどの費用を負担するか

  • 敷金の返還がある場合の配分方法

  • 契約をどちらが引き継ぐか(再契約の可能性も含む)

  • 連帯保証人の変更や解除についての手順

書面に残さなくてもよいが、信頼関係のもとでの「万一の話し合い」は、同棲生活の安心材料にもなる。


名義は“人間関係”と“契約関係”の橋渡し

同棲における契約名義の扱いは、感情や信頼だけでなく、法的・実務的な視点から慎重に判断することが求められる。契約とは「生活の土台」であり、住まいを共有するということは、それだけ責任も共有することを意味する。

信頼している相手だからこそ、あいまいにせず、どの名義形式が自分たちのスタイルに合っているかを丁寧に検討しよう。