2025/06/19
外国人向け賃貸でよくある質問ベスト10

日本で生活を始めようとする外国籍の人々にとって、住まい探しは最初に直面する大きなハードルの一つである。文化や言語の違いに加え、日本特有の賃貸契約制度に戸惑う場面も少なくない。多くの物件情報は日本語で書かれており、契約書や重要事項説明の内容も専門用語が多いため、十分に理解できないまま契約を進めてしまうこともある。

こうした状況を踏まえ、日本で初めて賃貸契約を結ぶ外国籍の人がよく抱く疑問を10の視点から整理し、それぞれの背景や現実的な対応方法について詳しく解説していく。これから住まいを探そうとする外国人だけでなく、不動産関係者やサポートする立場の人にとっても参考になる内容である。

日本で外国人でも賃貸契約は可能か

日本では法律上、国籍によって賃貸契約の可否が制限されることはない。そのため、外国籍の人でも正規の滞在資格があれば、問題なく賃貸物件を借りることができる。ただし、実務的には貸主の判断によって、外国籍の借主に対して契約を拒否するケースが存在する。

言語の壁や文化の違い、長期滞在の不確実性などが理由として挙げられることが多い。こうした背景から、外国人歓迎と明記された物件や、多言語対応をしている不動産会社を選ぶことで、契約までのハードルを下げることが可能である。

保証人がいなくても契約できるのか

日本の賃貸契約では保証人が必要とされるケースが一般的であるが、保証人がいない外国人に対しては、保証会社を利用することで代替が可能となっている。保証会社は借主が家賃を滞納した場合に、代わりに支払いを立て替える仕組みであり、保証人を確保するのが難しい場合には事実上必須の制度である。

保証会社を利用するには、身分証明書や在留カード、就業証明書などを提出し、所定の審査を受ける必要がある。費用としては、契約時に賃料の半月から1か月分程度の保証料が発生し、1年ごとの更新料も設定されているのが一般的である。

契約書は英語でも用意してもらえるのか

賃貸契約書は日本語で作成されるのが原則である。これは法律上の要件ではなく、実務的な慣習である。ただし、近年では外国籍の入居者が増えていることから、英語版の参考訳を併用する不動産会社も増えてきている。

ただし、あくまで日本語版が正式な契約文書となるため、参考訳と原文の間に矛盾があった場合は、日本語版が優先される。契約内容を正しく理解するためには、重要事項説明の際に通訳を依頼するか、信頼できる第三者と一緒に内容を確認することが望ましい。

支払いは現金でなければならないのか

多くの賃貸物件では、家賃の支払いは銀行振込または口座振替によって行われる。現金払いに対応している物件は少なく、特に定期的な支払いにおいては銀行口座を開設することが事実上必要となる。

日本で銀行口座を開設するには在留カードや住民票などの提出が求められ、短期滞在者の場合は開設できない場合もある。そのため、口座を持てない人向けに、保証会社経由でコンビニ払いなどの代替手段が用意されているケースもある。

支払い方法については契約前に確認し、必要であれば開設可能な金融機関を探すなどの準備をしておくことが現実的である。

入居までにどれくらいの費用が必要か

賃貸契約時に必要な初期費用は、家賃の4か月から6か月分が目安とされている。内訳としては、敷金、礼金、前家賃、仲介手数料、保証料、火災保険料、鍵交換費用などが含まれる。

敷金や礼金が不要な物件も増えてきているが、その分家賃が割高だったり、クリーニング費用を別途請求されるなど、条件には注意が必要である。契約書に記載された金額の総額を確認し、支払日や方法も含めて明確にしておくことが大切である。

外国人でも好きなエリアに住めるのか

住むエリアの制限は原則として存在せず、物件ごとの空き状況と貸主の判断によって入居の可否が決まる。都市部では外国籍の入居者に慣れている物件も多く、比較的スムーズに契約が進む傾向がある。一方で、地方や住宅地では外国人への対応に不慣れな管理会社や貸主がいることもあり、契約に時間がかかることもある。

外国人が多く住んでいる地域では、言語サポートや国際的な文化に理解がある物件も見つけやすいため、生活しやすさという観点からもエリア選びは慎重に検討すべきである。

契約は短期でも可能か

一般的な賃貸契約は2年間の期間で結ばれることが多く、短期契約は特別な条件が必要となる。マンスリーマンションや家具付きの定期借家契約であれば、1か月から数か月といった短期でも借りることができるが、通常の賃貸物件では1年未満の契約は断られることが多い。

どうしても短期滞在を希望する場合は、最初から短期契約に対応した物件を探すか、法人契約など別の契約形態を検討する必要がある。短期契約は家賃が割高に設定されていることも多いため、総費用を比較する視点も欠かせない。

火災保険はなぜ必要なのか

日本の賃貸契約では、火災保険への加入が契約条件として定められていることが一般的である。この保険は、借主の過失による火災や水漏れ事故、またはそれにともなう他者への損害賠償に備えるものである。

火災だけでなく、盗難や落雷による家財の損傷も補償対象となる場合がある。契約時には不動産会社が提携する保険商品を紹介されるが、自分で条件を満たす保険を選んで加入することも可能である。

トラブルが起きたときは誰に連絡すればいいのか

契約時に説明される管理会社が、物件のトラブルや問い合わせの窓口となることが多い。水漏れ、鍵の紛失、設備の故障などの緊急時には、管理会社に連絡をすることで対応が行われる。

入居後すぐに、管理会社の連絡先を把握し、連絡方法や営業時間を確認しておくことが重要である。また、言語が通じにくい場合に備えて、通訳のサポートがあるかどうかも事前に聞いておくと安心である。

退去時に敷金は返ってくるのか

敷金は退去時の原状回復費用に充てられるため、全額返金されるとは限らない。部屋に損傷がなければ多くの場合返金されるが、壁の汚れや設備の劣化が修繕対象となる場合には、その費用が差し引かれる。

国のガイドラインでは、通常使用による劣化は貸主負担とされているが、実務では契約書や特約によって異なる解釈がされることもある。入居時に部屋の写真を撮っておくなど、証拠を残すことで退去時のトラブルを回避できる。