賃貸住宅の契約期間は、通常2年が一般的。多くの人がこの「契約更新」を繰り返して長く住み続けているが、ある日突然──
「契約満了につき、更新はできません」
という通知が届いたら、どうすればいいのか?
「何か悪いことをしたのだろうか?」「本当に出ていかなければならないのか?」と、不安になる方も多い。
実はこの**「更新拒否」には、ルールと制限がある**。この記事では、賃貸契約の更新を拒否されたときの対応方法、法的な立場、そして住まいを守るためにできることを整理してお伝えする。
まず前提として:賃貸契約には2種類ある
更新に関するルールは、契約の種類によって大きく異なる。
✅ 普通借家契約(一般的な2年契約など)
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原則として借主に強い居住権がある
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契約期間終了後も「更新」を前提とし、貸主側が拒否するには正当な理由が必要
✅ 定期借家契約(再契約型)
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契約期間満了で自動的に契約終了
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正当な理由がなくても更新されない
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更新ではなく「再契約」として新たな審査が必要になる
※更新拒否に納得できない場合、まずは自分の契約がどちらの形式かを確認することが大前提となる。
【普通借家契約】での更新拒否は「原則できない」
貸主が一方的に更新を拒否するためには、法律上「正当な事由(正当事由)」が必要とされている(借地借家法第26条)。
正当事由とは?
以下のような事情が、総合的に判断される:
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建物を取り壊して建て替える必要がある
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貸主が自分で住むために使用したい
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長期にわたる家賃滞納や契約違反がある
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近隣との重大なトラブルを起こした
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建物が老朽化し、安全性に問題がある
これらに加えて、「立ち退き料の提示」「代替物件の紹介」など、借主側の生活への影響を緩和する配慮がなければ、更新拒否は認められない可能性が高い。
【定期借家契約】での満了・更新拒否は原則通る
一方で、定期借家契約は契約期間が終わると自動的に終了するのが基本ルール。更新の義務もなく、貸主側から更新を拒否された場合、借主側が異議を唱える法的根拠は基本的にない。
ただし、再契約の可能性がある場合もあるため、以下の点を確認する:
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契約書に「再契約の可否」や「審査条件」が記載されているか
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再契約の意思表示を期限内に行ったか
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管理会社に明確な説明を求めたか(なぜ不可なのか)
更新拒否を受けたときの対応ステップ
① 契約書を確認する
まずは、**契約の種類(普通借家契約 or 定期借家契約)**を確認。更新条項、解約条件、特約などをチェックする。
② 拒否理由の説明を求める
管理会社や貸主に連絡し、更新不可の理由が文書や口頭で説明されるかを確認。正当事由があるかどうかの判断材料になる。
③ 納得できない場合は専門機関に相談する
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地域の宅建協会
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消費生活センター
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弁護士相談(法テラスなど)
「借主に落ち度がなく、正当事由があいまいなまま更新拒否された」場合、立ち退きを拒否する交渉や法的手段の検討も可能。
立ち退きが決まった場合の準備と交渉
やむを得ず退去が決まった場合でも、借主には以下のような「対価を求める権利」がある。
▶ 立ち退き料の交渉
引越し費用・新居初期費用・精神的損害への補填として、数十万円〜家賃の数ヶ月分の立ち退き料を支払うのが通例。
▶ 退去期限の調整
新居探しや引越し準備にかかる時間を見越して、退去時期の延長交渉が可能なこともある。
トラブル回避のために契約前に見ておくべきポイント
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「契約期間満了後の取り扱い(更新の有無)」が書かれているか
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「定期借家契約」の場合は、契約時に説明書面を受け取っているか
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特約で「更新できない」と明記されていないか
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建物が古い場合、今後の建て替え予定の有無を確認
更新拒否は「拒否された瞬間から交渉が始まる」
更新拒否を受けたからといって、即退去しなければならないわけではない。
借主には法律で保護されている権利があり、納得できる説明・条件がない限りは、拒否に対して異議を唱えることも可能だ。まずは冷静に契約と状況を整理し、感情的に動くのではなく、正しい順序で対応を進めていこう。
「住み続けたい」という気持ちをあきらめる前に、できることはまだある。