2025/06/19
契約解除“違約金”の存在を見落とすと大損

日本の賃貸住宅において、入居前や契約時に最も注意すべきポイントのひとつが「違約金」に関する取り決めである。物件選びの際には、家賃や初期費用、設備、立地などに目が向きがちだが、契約を結ぶ前に「解約時に発生する可能性のある費用」まで意識している人は意外と少ない。

とくに、「契約期間内の退去には違約金が発生する」といった条項を見落としていると、いざ転勤や急な引っ越しが必要になったときに思わぬ費用が請求されることがある。引っ越し費用だけでなく、家賃とは別の金額が一括で請求されることで、経済的な負担が大きくなるケースもある。

この記事では、賃貸契約における違約金の性質と注意点、契約前に確認すべき条項、そして実際に違約金が発生する典型的な場面について、事実に即して解説する。

「違約金」とは何を指すか

違約金とは、契約で定めた約束に反する行為があった場合に、その責任を金銭で補償するために請求される金額のことである。賃貸契約においては、主に「契約期間内に借主の都合で退去した場合」に設定されていることが多い。

たとえば、「契約期間は2年間。1年未満で解約する場合は賃料の1か月分を違約金として支払う」といった条文がある場合、入居後8か月で退去したとすれば、家賃とは別に1か月分の家賃相当額を追加で支払う義務が発生する。

この取り決めは、貸主側が入居者の早期退去によって失う収入や再募集の手間を補填する目的で設けられており、契約書や重要事項説明書に特約として明記されていることがほとんどである。

「解約予告期間」との違いを理解する

賃貸契約には「解約予告期間」というものがある。これは、退去の意思を伝えてから契約終了までの最低通知期間であり、通常は「1か月前」が基本である。この期間に家賃が発生するのは当然のことだが、違約金とはまったく別の性質のものである。

たとえば、契約書に「1年未満の解約には違約金あり」「解約は1か月前に通知」と書かれていた場合、契約から半年で解約するには、以下のような費用がかかる可能性がある。

  • 解約通知後の1か月分の家賃(解約予告期間中の家賃)

  • 違約金(家賃1か月分)

このように、違約金の存在に気づかずに早期退去をすると、家賃2か月分近くの出費になることがある。事前に違約金の条項を確認しておかないと、大きな損失を被る可能性がある。

違約金が設定されやすい物件の傾向

すべての物件に違約金が設定されているわけではないが、次のような物件では特に違約金が設けられていることが多い。

  • 礼金ゼロ、敷金ゼロなど初期費用を抑えた「ゼロゼロ物件」

  • フリーレント(入居後1か月間の家賃無料)付き物件

  • 築浅で人気の高い新築物件

  • 不動産会社がキャンペーンとして初期費用を減額している場合

これらの物件では、貸主が初期収入を抑えている代わりに、借主が一定期間住み続けることを前提に条件を設定している。そのため、短期退去によって想定された収益が得られなくなることを避ける目的で、違約金が設定される。

特にフリーレント付きの物件では、「1年未満の解約でフリーレント分を返金」といった条項が設けられていることもあり、無料期間の恩恵を受けた分がそのまま違約金として請求される可能性がある。

契約書での確認ポイント

違約金の有無は、契約書または重要事項説明書の「特約事項」や「契約期間」「解約条項」の箇所に記載されている。確認すべき主な表現は以下のようなものがある。

  • 「契約開始から1年未満で解約した場合、賃料1か月分を違約金として支払う」

  • 「フリーレント利用時に12か月未満で解約した場合、無償期間分の家賃を返還」

  • 「短期解約には違約金として5万円を支払うこと」

こうした文言があれば、入居後に短期間で退去する際は追加費用が発生することが確定している。契約前に不動産会社の担当者に「違約金はあるか」「何か月住めば免除になるか」などを確認し、納得したうえで契約することが非常に重要である。

違約金を避けるための工夫

引っ越しの予定が流動的であったり、長期間住むかどうかが不透明な場合は、契約期間や違約金の条件に柔軟性がある物件を選ぶことが重要になる。たとえば、次のような工夫が考えられる。

  • 違約金なし、または1か月以内で発生する条件の物件を選ぶ

  • 短期契約やマンスリー契約を検討する

  • フリーレント物件であっても違約金の条件が明確かどうかを確認する

  • 契約書に「違約金なし」と明記されていることを確認する

また、入居時点では想定していなかった事情で早期退去が必要になった場合には、管理会社や貸主と事情を正直に相談することで、柔軟に対応してもらえることもある。契約に明記されているとはいえ、交渉の余地がある場合もあるため、話し合いの姿勢を持つことが大切である。