2025/07/03
子どもがリーダー!“逆ガイドツアー”体験 導く立場で広がる、自信と気づきの旅

旅では大人が道を決め、予定を立て、説明をする。子どもはその案内に従って動く、というのが一般的な構図だ。けれど、その立場を“逆転”させてみたらどうなるだろう。子どもがリーダーとして親や家族を案内する「逆ガイドツアー」は、自分で考え、伝えることで、主体的な旅の楽しさに目覚める特別な体験になる。

このプログラムは、地域の観光協会や教育施設、子ども向けワークショップの一環として実施されることが多い。スタート前に簡単なガイドの心得を学び、地図や資料、伝えたいスポットの特徴を子どもが自分で調べる。そして当日は“ガイド役”として、家族やグループを自分の言葉で案内していくという構成だ。

案内する場所は、町の神社や昔ながらの商店街、景色のきれいな小道や文化施設など、子どもが自分の目線で選んだ“おすすめの場所”。「ここは階段が多いけど、登るとすごく気持ちがいいよ」「このお店の看板、実は手作りなんだって」──そんな一言ひとことに、調べたことや感じたことが詰まっている。

親や大人は“お客さん”の立場になり、あえて質問をしたり、褒めたり、感想を伝えたりすることで、子どものガイド体験を支える。自分が話すことで周囲が動き、理解が深まり、楽しんでくれるという実感が、子どもにとっては大きな成功体験になる。

ガイド中の子どもは、いつもより背筋が伸びている。言葉を選びながら説明し、相手の反応を見て次の話題を考える。話すことが苦手な子でも、地図を見せたり、ポイントを指さしたりすることで、自分のスタイルで伝える工夫をするようになる。そうした姿は、親にとっても驚きと誇らしさに満ちた時間となる。

プログラムの最後には、「今日のガイドをふりかえろう」というまとめの時間があり、自分が話してよかったこと、もっと伝えたかったこと、楽しかった瞬間などを簡単に書き留める。そのメモは、小さなガイド証や修了カードと一緒に旅のおみやげとなり、子どもの自信の証として手元に残る。

この“逆ガイド”は、観光だけでなく、学びの要素も豊富に含んでいる。調べる力、伝える力、人前で話す力、相手の立場で考える力──どれも一度に育まれ、旅という非日常の中で自然と身につく。また「自分の言葉で伝える」ことが、体験そのものを深く記憶に残す手助けにもなる。

外国人の親子にとってもこのプログラムは好評で、多言語でガイドする子どもの姿に感動したという声もある。英語や母国語で準備し、日本語で一部をチャレンジするなど、言葉の壁を越える経験が、国際感覚を育てる第一歩にもなっている。

“案内される側”から“案内する側”へと立場が変わることで、子どもは受け身から主体へとシフトする。その変化は、旅だけでなく、日常の中でも自信と表現力となって積み上がっていく。

旅をするだけでなく、旅を“つくる”側に回ってみる。それは子どもにとって、自分の存在が誰かに喜ばれるという実感を得られる、かけがえのない体験となる。