2025/05/23
富裕層が惹かれる“静かで美しい街”──鎌倉・葉山・軽井沢の現在地

高層ビル群に囲まれた都市生活は便利だが、日常に“静けさ”や“余白”を求める声が世界の富裕層の間で高まっている。そんな中、日本において“都会から一歩離れた静謐な土地”への関心が急増している。

その筆頭が、鎌倉・葉山・軽井沢という3つのエリアだ。

東京からのアクセスも良く、文化・自然・歴史が絶妙に交差するこの3地域は、別荘地としてだけでなく“第二の拠点”“本格的な移住先”としても選ばれている。なぜ今、海外の富裕層がこれらの街に惹かれるのか。その魅力と実際の動向を紐解いていこう。


■ 鎌倉:歴史と自然が調和する“和のビーチシティ”

神奈川県・鎌倉は、日本でもっとも“古くて新しい”街のひとつ。800年以上の歴史を持つ寺社や石畳が残る一方で、近年はカフェ、ギャラリー、オーガニックレストランなどが急増し、国内外のセレブリティが週末を過ごす場所として注目されている。

鎌倉駅から海まで徒歩圏という立地も魅力的で、材木座や由比ヶ浜といった海辺のエリアには、古民家をリノベーションした一棟貸し宿や、高級マンションが立ち並ぶ。特に“和の文化を感じながら海を眺める生活”は、外国人富裕層にとって唯一無二の体験となる。

東京から車・電車で約1時間という手軽さもあり、セカンドハウスとしての需要は今後さらに高まると見られている。


■ 葉山:プライバシーと自然に守られた“隠れた別荘地”

鎌倉の南に位置する葉山は、政治家や財界人、海外の外交官たちの“プライベートリゾート”として長年愛されてきた場所だ。

海と山に挟まれた小さな町には派手な観光地はないが、それがむしろ“本物の静けさ”を求める人々を惹きつけている。葉山の邸宅は、表通りからは見えず、緑に包まれた高台に建てられることが多い。まるで自然の中に溶け込むような美しい建築が点在しており、完全予約制の高級レストランや、プライベートビーチ感覚の海岸が点在する。

また、葉山マリーナではクルーザーやヨットの保有・係留も可能で、海遊びを生活の一部に取り入れる人々にとって理想的な環境が整っている。


■ 軽井沢:国際的別荘地としての完成形

標高1,000mの高原に広がる軽井沢は、すでに“日本で最も完成された富裕層向け別荘地”といっても過言ではない。

明治時代から続く西洋人の別荘文化が色濃く残り、旧軽井沢エリアには趣のある洋館やモダン建築が並ぶ。また、星野リゾートを中心としたホテル・レストラン群の充実度は群を抜いており、シンガポールや香港の富裕層にもリピーターが多い。

東京から新幹線でわずか70分。都心でビジネスを展開しながら、週末は完全にリトリートできるこの距離感は、アジアのどの都市にも真似できない“別荘文化の成熟形”だ。

近年では、冬の利用も増え、スキーや薪ストーブ、ウィンターライフを楽しむ外国人ファミリーも増加。完全移住する人も少なくない。


■ “静かで美しい”ことが最大の贅沢になる時代

これら3つのエリアに共通するのは、「便利さよりも静けさ」「派手さよりも美しさ」を追求した土地であること。

都市の真ん中にタワーマンションを持つこととは別の価値軸で、“自然と共にある暮らし”にステータスを見出す富裕層が世界的に増えている。特にコロナ禍をきっかけに、「心の豊かさ」「呼吸が深くなる環境」「人生を楽しむ時間」を求める流れが明確になった。

彼らが求めているのは、利回りではなく、“一生手放したくない空間”。


■ 東京の次に持つべき、“静寂の不動産”

都市と自然を“二拠点”で持つライフスタイルは、今や世界の富裕層の標準になりつつある。東京・港区にマンションを、そして鎌倉や軽井沢に別荘を。そんな「ONとOFFの切り替え」を日本で実現できることは、海外の投資家にとって大きな魅力だ。

“静かで美しい”という贅沢を、日本で手に入れる。

その選択は、投資ではなく、“人生を豊かにする決断”なのかもしれない。