本州の最西端、山口県北部には、日本でも屈指の“絶景ロード”が広がっている。エメラルドグリーンの海にまっすぐ伸びる角島大橋と、朱色の鳥居が海岸線を彩る元乃隅(もとのすみ)神社。どちらも写真やSNSで注目を集める人気スポットだが、自らの目で見て、風を感じながら走るドライブこそが、このエリアの魅力を最も深く体感できる方法である。
出発は山口県の中心都市・下関または新幹線の停車駅・新山口。レンタカーを借りれば、1日で角島と元乃隅神社を効率よく巡ることができる。国道191号線を北上するルートは、信号も少なく快走できる海沿いの道で、ドライブそのものが旅の醍醐味になる。
まず向かうのは「角島大橋」。下関市街から車で約1時間半、美しい海を背景に現れる橋の姿は圧倒的だ。全長1780メートル、通行無料のこの橋は、離島・角島と本州を結ぶアクセス路でありながら、海面すれすれに伸びる構造とそのロケーションから、映画やCMのロケ地にも選ばれてきた。
橋の手前には展望スポットが複数あり、特に「海士ヶ瀬公園」からの眺めは定番。晴れた日には空と海の青が溶け合い、車窓から見るだけでは味わえないパノラマが広がる。角島に渡れば、白砂が広がる「角島大浜海水浴場」や、風格ある「角島灯台」など、ゆったりと過ごせる場所も多く、ドライブの途中で小休止するには最適だ。
次に目指すのは、長門市の日本海側にある「元乃隅神社」。角島から車で約1時間、海岸沿いのワインディングロードを走ると、断崖に沿って並ぶ赤い鳥居群が視界に入ってくる。123基の鳥居が海へ向かって並ぶ風景は、まさに絶景。鳥居の間を歩いていくと、潮風と波音に包まれ、自然と神聖さが一体となった空間に心が静まっていく。
境内には、賽銭箱が頭上の鳥居の上に設置された「日本一入れにくい賽銭箱」もあり、観光地らしいユーモアも。参拝と同時に、遊び心を感じられるのもこの神社の魅力のひとつだ。
帰路は「千畳敷」や「青海島」など、夕陽が美しい展望スポットに立ち寄るのもおすすめ。山口北部は混雑が少なく、空と海の変化を感じながら移動できるのもドライブ旅の醍醐味だ。夕暮れ時の角島大橋を逆光の中で眺めるのも格別な締めくくりとなる。
角島と元乃隅神社をめぐる旅は、単なる“観光名所めぐり”にとどまらない。車窓に広がる景色と、道の先にある静けさと迫力に出会う体験は、日常のスピードを一度ゆるめ、自分の中の感覚を取り戻すような旅になる。山口の最果てにこそ、深く記憶に残る風景が待っている。