東京・池袋から電車でおよそ30分。埼玉県川越市は、江戸時代の情緒を色濃く残す街並みと、多彩な食べ歩きグルメで人気を集めている。「小江戸」とも称されるこの街では、現代の喧騒を忘れさせるレトロな時間が流れている。
川越駅から中心部までは、徒歩またはレトロなボンネットバスでアクセスできる。最初に訪れたいのは「蔵造りの町並み」として知られる一番街。黒塗りの重厚な蔵造り建築が立ち並び、まるでタイムスリップしたかのような景観が続く。中には老舗の和菓子店や醤油蔵を改装したカフェ、地元の工芸品を扱う雑貨店などが軒を連ね、歩くだけで目にも楽しい。
川越観光の魅力の一つが、気軽に楽しめる食べ歩きスタイル。さつまいもを使ったスイーツが有名で、紫芋ソフトクリームや大学いも、芋けんぴなど、店ごとに異なる味わいが用意されている。さらに、醤油団子や肉まん、地元のクラフトビールを片手に歩けば、小腹を満たしながら街の魅力に浸ることができる。
観光名所のひとつである「時の鐘」は、江戸時代から街に時を知らせてきた存在で、現在も一日数回、鐘の音が響く。鐘の音を聞きながら街を歩くと、日常とは異なる感覚に包まれ、自然と歩調がゆっくりになる。近くには「菓子屋横丁」と呼ばれる通りもあり、昔懐かしい駄菓子や手作りの飴細工など、親しみやすい商品が並ぶ。
午後は「川越氷川神社」へ。縁結びの神様として知られ、若い女性やカップルに人気が高い。境内には風鈴やおみくじが並び、季節ごとに異なる装飾が施される。夏には風鈴回廊、冬にはライトアップが行われ、写真映えするスポットとしても注目されている。
帰路の前に、古民家をリノベーションしたカフェでひと息つくのもおすすめだ。抹茶ラテや甘味とともに、昔ながらの建築に包まれて過ごす時間は、どこか心を整えてくれる。窓の外に広がる石畳や人力車の風景もまた、川越ならではの魅力だ。
池袋からわずかな距離にありながら、江戸の面影と現代の創意が共存する川越。気軽に訪れられるのに、旅情をしっかり味わえる街として、これからも注目を集める存在である。