日本旅行でふと立ち寄った観光地の茶屋で注文した抹茶ソフトクリーム。その一口が、想像を超える味わいだった。甘すぎず、苦すぎず、口の中に広がる香りと余韻。抹茶という素材の奥深さを、あの冷たいデザートを通して初めて知った。日本の抹茶ソフトは、ただの観光地スイーツではなかった。
抹茶というと、苦味が強い、渋い、上級者向けというイメージを持つ人も多いかもしれない。だが日本の抹茶ソフトは、その風味を活かしながらも非常にバランスが取れている。ミルクのまろやかさと合わさることで、まるで抹茶ラテを凍らせたような優しい甘さと香ばしさが感じられる。苦味が苦手だった人が「これなら食べられる」「むしろ好きになった」と言うのも頷ける。
各地の名所には、その土地ごとに特徴のある抹茶ソフトが存在する。京都の宇治、静岡の掛川、福岡の八女など、抹茶の名産地では濃厚なタイプが多く、抹茶の深みが際立っている。一方で、ミルク感を強めたソフトや、黒蜜や白玉などの和素材をトッピングしたスイーツタイプもあり、バリエーションは驚くほど豊富だ。
特に印象的だったのは、口に入れた瞬間に広がる“抹茶の香り”である。ただ甘いだけではない、草木のような清涼感とほろ苦さが、冷たさとともにすっと舌の上を通り過ぎていく。そして後味は驚くほどスッキリとしていて、食後のデザートとしても、街歩きの合間のひと休みにもぴったり。日本の夏の暑さの中で食べる抹茶ソフトは、体と心を一気にリセットしてくれる。
見た目も美しく、深い緑色が印象的だ。写真に収めたくなるほど鮮やかで、観光地の風景と一緒に撮影すれば、思い出の1枚になる。最近では竹の器や陶器のカップに盛り付けられた抹茶ソフトもあり、食べる前から“和”を感じる演出に心が躍る。旅の中でこうしたちょっとした驚きがあると、記憶に残りやすい。
価格も手頃で、観光地にある抹茶スイーツ専門店でも数百円で楽しめることが多い。サイズは控えめでも満足感が高く、食べ歩きにも適している。駅ナカ、神社前、城下町、庭園横。さまざまな場所で出会える抹茶ソフトは、まさに旅の途中でふと立ち寄りたくなる存在だ。
さらに、抹茶ソフトには季節限定や地域限定の商品も多く、訪れる時期によって味の違いを楽しめるのも魅力のひとつ。春には桜と合わせたピンク色のマーブルソフト、秋には栗やほうじ茶とのミックス、冬には温かいぜんざいと組み合わせた甘味セットなど、季節ごとの楽しみ方が用意されている。
日本を訪れて、寺や城、温泉などに感動するのはもちろんだが、意外にも「また食べたい」と思うのは、この抹茶ソフトだったりする。五感に訴えかけるこの一品は、和菓子とはまた異なる角度から日本文化の深さを伝えてくれる存在だった。
次に日本を訪れるときも、きっとまたどこかで抹茶ソフトを探してしまうだろう。味だけでなく、その土地の空気と一緒に味わった記憶が、旅のなかで静かに香り続けている。抹茶ソフトは、日本でしか出会えない“甘い体験”のひとつだ。