2025/06/19
日本での居住履歴がない場合に通る審査対策

日本で新しく生活を始める外国籍の方にとって、最初に直面する大きな壁のひとつが「賃貸住宅の入居審査」である。特に、日本での居住歴がまったくない、つまり日本での生活実績・信用情報がゼロの状態で賃貸契約を進めようとすると、思った以上に審査でつまずくことがある。

「在留カードがあるのに断られた」「仕事があるのに申し込めなかった」といった声の背景には、日本独自の審査基準と、過去の居住情報が考慮される実務上の慣習がある。

この記事では、日本での居住履歴がない状態でも賃貸審査を通過するためにできる現実的な対策を3つの柱に分けて詳しく解説する。


1. 必要書類を万全にそろえる

居住履歴がないということは、それ以外の要素で信頼性を示す必要がある。そのためには、最初に提出する書類の充実度が審査通過に直結する。

審査でよく求められる書類:

  • 在留カード(Residence Card)
    有効期限が十分にあることを確認し、コピーを提出する。

  • パスポート
    滞在歴や入出国履歴がわかるページのコピーも求められることがある。

  • 就労証明書または内定通知書
    勤務先が決まっている場合は、会社の社名、所在地、電話番号、連絡先担当者の記載された書類があると有利。

  • 給与明細または雇用契約書
    安定収入があることを証明できれば、賃貸人の安心材料になる。

  • 日本の銀行口座情報
    家賃の引き落としや経済的基盤を証明できる。

  • 緊急連絡先(日本国内)
    日本語が通じる人であると尚良い。

ワンポイントアドバイス

書類は「出せと言われる前に出す」のが理想。提出時に不動産会社へ「他に必要な書類はありますか?」と先回りして聞くことで、対応力や誠実さが伝わる。


2. 審査通過率の高い物件を選ぶ

審査の難易度は、物件や貸主によって大きく異なる。すべての物件が厳しいわけではなく、「外国籍の入居者に慣れている物件」を選ぶだけで、契約がスムーズに進むことがある。

対策のポイント:

  • 保証会社の利用が前提となっている物件を選ぶ
    保証人不要で、書類さえ整えば比較的柔軟に審査されやすい。

  • 「外国人可」「外国人歓迎」と明記されている物件を探す
    多言語対応スタッフがいる不動産会社や、外国人の入居実績がある物件ではトラブル防止の体制も整っている。

  • 家具付き・短期賃貸・マンスリーマンションも検討
    一時的に住める場所からスタートし、そこから信用を積んで長期賃貸へ移行するのも現実的な戦略。

  • 外国人向け専用サイトを活用
    英語・中国語・ベトナム語など多言語での情報提供があるサイトであれば、居住歴がない外国籍の入居を前提にした物件が多く掲載されている。


3. 信頼の“代替材料”を用意する

「履歴」がない以上、貸主や保証会社にとっては「この人が家賃を払ってくれるか」「問題を起こさないか」という不安がある。その不安を消すには、履歴の代わりとなる信頼材料を自ら用意することが重要になる。

信頼を示す工夫:

  • 日本語での最低限のコミュニケーションが可能であることを伝える
    契約の説明が理解できる、連絡が取れるというだけで安心される。

  • 保証会社に積極的に加入する意思を示す
    「保証会社を使っても構わない」と事前に伝えておくと、貸主の判断も柔らかくなる。

  • 初期費用・前家賃を多めに支払うことを相談する
    敷金を通常より多く預ける、家賃を先払いするなどの提案は、貸主に対して「責任感」の証明になる。

  • 紹介状や在籍証明書を用意する
    勤務先・学校からの紹介文や推薦文があると、日本での社会的な立場が伝わりやすい。


審査時に気をつけたい「態度と印象」

日本の不動産業界では、申込者の態度ややり取りの丁寧さも審査の一部とみなされることがある。履歴や収入だけでなく、以下の点にも注意を払いたい。

  • メールの返信は早めに返す

  • 記入書類は丁寧に記入する(空欄を減らす)

  • 不明点はきちんと質問し、理解したうえで申し込む

  • 言葉が通じない場合も、通訳の用意をしておくなどの配慮を見せる


居住歴がなくても、「信用」はつくれる

日本での居住歴がないこと自体はハンディにはなり得るが、それは決して「契約できない」という意味ではない。むしろ、居住歴がないからこそ、「誠実な対応」と「必要書類の完備」、「信頼材料の提示」によって、十分にそれを補うことができる。

事前に不安要素を取り除く準備をし、貸主側の視点に立って「安心して契約してもらう」姿勢を見せることが、入居への一番の近道となる。