2025/07/03
日本の「食育の日」に参加しよう 食べることから始まる学びとつながり

日本では毎月19日を「食育の日」と定め、全国各地で食に関する学びや体験を広げる取り組みが行われている。食育とは、食を通じて心と体の健康を育む活動であり、近年は家庭や学校だけでなく、観光や地域イベントとも結びついて広がりを見せている。旅の中でこの「食育の日」に触れることで、日本の食文化の奥深さと、人と人をつなぐ“食の力”を実感することができる。

食育イベントでは、地元の旬の食材を使った料理体験や、味覚の違いを知るワークショップ、農業や漁業の現場を見学するツアーなど、多彩なプログラムが用意されている。たとえば、子どもと一緒に収穫した野菜で味噌汁をつくる体験では、ただ料理を楽しむだけでなく、食材がどこから来たのか、どのように育てられたのかを知ることができる。こうした学びは、食べるという行為に感謝と理解をもたらすきっかけになる。

とくに注目されているのが、五感を使って食を学ぶアプローチである。食材の色、香り、手触り、音、そして味わい。それぞれに注意を向けることで、食事がより豊かで記憶に残るものとなる。あるプログラムでは、昆布だしと鰹だしの飲み比べを通して「旨味とは何か」を探ったり、味噌や醤油の香りの違いを比べたりする体験が用意されている。こうした時間を通じて、日本人が昔から重ねてきた「味を感じる力」にふれることができる。

食育の日の体験は、外国からの旅行者にとっても、日本の文化を深く知る絶好の機会となる。日本語がわからなくても、実際に手を動かし、食材に触れ、食べることで学ぶ体験は、言葉を超えて心に届く。料理体験の前後には、地元の人との交流が生まれることも多く、地域ならではの食卓の話や、昔ながらの保存食の知恵などが自然と共有されていく。

また、親子での参加にも配慮がなされており、子どもが主役となって調理や盛りつけを体験できるプログラムもある。大人がサポートしながら一緒に学ぶことで、家庭での食事への意識も自然と変化していく。調理体験のあとは、皆で一緒にテーブルを囲んで食事をする時間が設けられており、食べることの喜びや達成感が深く共有される。

開催場所は、農園や道の駅、地域の公民館、食文化施設など多岐にわたる。なかには、田園風景の中で開催される屋外イベントもあり、自然の中で食と向き合うことで、より五感が研ぎ澄まされる。地元の人々とのふれあいも含めて、食べることを“体験”として感じられる一日となる。

食育の日に参加するという選択は、観光ではなかなか見えにくい日本の“日常の美しさ”にふれることでもある。忙しない旅の中で、ゆっくりと手を動かし、素材と向き合い、人と語らいながら一緒に食卓を囲む時間は、静かで豊かな記憶として残っていく。食べることの背景にある物語を知ることで、食は単なる栄養補給から“生きる力”へと変わっていく。

日本各地で広がる食育の日の取り組みは、旅人にとっても、暮らしを見つめ直す入り口となる。食べるという何気ない行為に込められた心と知恵を感じながら、ひとつの味を通して日本と出会う体験は、深くやさしい学びをもたらしてくれる。