2025/07/03
日本の居酒屋、焼き鳥の皮が美味すぎて一人で3皿頼んだ

旅先でふらりと入った日本の居酒屋。カウンター席に腰をおろし、まずはビールを一杯。注文に迷いながらも「焼き鳥盛り合わせ」をお願いした。その中にあった一串の“皮”を口に入れた瞬間、驚きと感動が押し寄せた。こんがりと焼けた表面の香ばしさ、じゅわっと広がる脂の旨み、そして絶妙な塩加減。気づけば「皮だけあと3本」と追加注文していた。

日本の焼き鳥は、部位ごとに味と食感の違いが楽しめるのが魅力だ。もも肉やささみ、レバー、ぼんじりと並ぶ中で、意外と主役になるのがこの“皮”である。外はパリッと、中はもちっと。火入れの技術がそのまま味に現れる部位だけに、焼き手の腕が如実に表れるとも言われている。

居酒屋によっては、皮だけを専門に焼いているようなメニュー構成の店もあり、串にぐるぐると巻いたタイプや、薄く広げて折りたたんだものなど、焼き方や形状にも個性がある。タレで香ばしく仕上げた甘じょっぱいタイプもあれば、塩でシンプルに脂の甘みを引き出すタイプもある。ひとくちごとに、焼き鳥の奥深さを感じずにはいられない。

美味しさの理由は、もちろん素材と技術の両方にある。鶏皮は部位によって脂のノリや厚みが異なるため、適切に下処理し、焼き加減を見極めることが重要とされている。強火で一気に焼けばパリッと、じっくり火を通せばもっちりジューシー。香ばしさと食感を両立させるその技術に、日本の居酒屋文化の繊細さが表れている。

それを支えるのが、店の雰囲気だ。煙が立ち上るカウンター、焼き台から聞こえるパチパチという音、隣の客が頼んだ品の香り。そんな五感すべてで味わう空間が、日本の居酒屋ならではの魅力でもある。注文のたびに目の前で焼き上がるライブ感は、食事というよりも一種のエンターテインメントに近い。

もちろん、皮だけが主役ではない。それでも一度その魅力に気づいてしまうと、他の串を押しのけてまでリピートしたくなる力がある。特に脂の甘さとビールの相性は格別で、軽くつまむつもりが、気づけば何本も頼んでしまっていることも珍しくない。

価格も手頃で、1本100〜200円ほど。おつまみとしても、しっかりした一品としても楽しめる。注文ごとに焼きたてが提供されるため、何度も追加してしまう人の気持ちがよくわかる。観光で歩き疲れたあとの一杯と一串に、これ以上ない幸福を感じられる。

海外ではあまりなじみのない“鶏の皮”という部位が、日本ではこんなに愛され、工夫されて提供されているという事実も興味深い。日本の食文化は、素材を余すところなく使い切る知恵と、それを美味しく仕上げる技術の集積で成り立っている。焼き鳥の皮は、その象徴とも言える存在だ。

次に日本を訪れたときも、また居酒屋を探してこの味を確かめたくなる。何気ない一串に、驚くほどの満足感と、静かな感動が詰まっている。焼き鳥の皮は、単なる副菜でも珍味でもない。それは、日本の味と技の真ん中にある、ごく日常的な“贅沢”のかたちなのだ。