2025/07/03
日本人が使ってる歯磨き粉、実は中国では手に入らない?

日本を訪れてまず驚かされるのが、コンビニやドラッグストアに並ぶ歯磨き粉の種類の多さである。用途別、香味別、成分別に細かく分類された商品が棚一面に並び、それぞれにこだわり抜かれた特徴がある。旅の中で何気なく購入した日本の歯磨き粉を使ってみたとき、その爽快感と使用感の違いに驚き、帰国後もその商品を探し続ける人は少なくない。

とりわけ日本の歯磨き粉には、虫歯予防や歯周病ケア、ホワイトニング、知覚過敏対応など、目的に応じた成分がきちんと設計されている。日本国内では当たり前に見かけるこうした高機能タイプは、実は海外、特に中国本土ではほとんど見かけることがない。販売されていたとしても種類は限られ、価格も高く、継続的に使うのが難しいという声も多い。

日本の製品には、歯科医と共同開発されたものや、薬用成分が高配合された商品が多く、市販品ながらも専門性を感じさせる設計がなされている。微細なフッ素粒子が歯に密着するように作られたもの、酵素で汚れを浮かせるタイプ、口臭や舌苔にまで配慮されたラインなど、その細やかさはまさに日本らしい発想だと感じる。

また香味やテクスチャーも独特で、ミント系だけでなく、緑茶や柚子、ハーブなどの和風フレーバーが用意されている点も興味深い。強すぎない優しい香りが口に広がり、毎日のケアが心地よい習慣へと変わっていく。使用後の清涼感も強すぎず、長時間続くのが特徴で、日常生活に自然に溶け込むように作られている。

パッケージデザインにも日本らしさが表れている。機能がひと目でわかる表記、やわらかな色使い、持ち運びしやすいスリムな形状。海外の製品に比べて無駄がなく、使う人の立場を考えた設計が随所に感じられる。日本語表記があるにもかかわらず、多くの訪日観光客が手に取って購入していくのも納得できる。

旅の途中で何気なく使った歯磨き粉があまりに快適で、その後まとめ買いをしたという話もよく聞く。人気商品は空港や免税店でも販売されているが、種類の豊富さという点ではやはりドラッグストアに勝る場所はない。実際に棚の前で成分を比較しながら、自分に合った一本を選ぶ時間もまた、日本旅行の一つの楽しみ方となっている。

こうした製品の多くが、日本国内でしか手に入らない。オンラインでの購入が難しい、あるいは送料や在庫の関係で入手が不安定なことから、日本滞在中に買いだめしておくのが常識という人もいる。中には10本以上まとめて買い、自分用と家族用に分けている姿も珍しくない。

歯磨き粉という一見地味な日用品に、ここまでのこだわりと技術が詰め込まれているのは、日本ならではの文化と生活観に根ざしていると言える。毎日使うものだからこそ、少しでも快適に、少しでも効果的にという考え方。その積み重ねが、世界中の旅行者を魅了してやまない“日常の感動”を生み出している。

次に日本を訪れたときは、ぜひドラッグストアの歯磨き粉コーナーに足を止めてみてほしい。そこには、単なる衛生用品ではない、日本人の美意識と生活の知恵が静かに並んでいる。