旅行中の体調不良は、誰にとっても避けたい出来事だが、もしものときに頼れるのが日本のドラッグストアである。しかし、日本語が読めないという理由で薬の購入をためらう人は多い。どの棚に何があるのか、効能は正しいのか、成分は自分に合っているのか。不安に感じるのは当然だろう。それでも、日本の薬局は想像以上に“わかりやすく”進化している。
店内に入ると、商品棚は効能別にきちんと整理されている。風邪、胃腸、頭痛、生理痛、アレルギー、睡眠、外用薬といったジャンルごとにコーナーが分かれており、それぞれに色分けされた表示やアイコンが付いている。日本語がわからなくても、「喉の痛み」「鼻水」「目のかゆみ」といったイラストが描かれているパッケージが多く、視覚的な手がかりだけでもある程度内容を判断することができる。
さらに、大手ドラッグストアでは外国語対応のラベルや翻訳パネルが設置されていることが増えている。英語や中国語、韓国語で書かれたポップや説明書が商品棚に添えられており、薬の名前や使い方、注意事項を確認できる。中にはQRコードを読み込むことでスマートフォン上で多言語の情報が表示される仕組みを取り入れている店舗もあり、ますます安心感が高まっている。
買い方も簡単で、店員に症状を伝えるだけで適した商品を提案してもらえることが多い。ジェスチャーやスマートフォンの翻訳アプリを使えば、言葉の壁はほとんど気にならない。指さし会話シートを用意している店舗もあり、「頭が痛い」「お腹が痛い」「寝られない」といった基本的なフレーズが用意されている。必要な言葉を指で示すだけで、店員とスムーズにやりとりできる。
成分表示や服用回数、飲み方なども、最近はピクトグラムや英単語を交えたデザインになっており、視覚で理解できる工夫が随所に施されている。例えば、錠剤のパッケージには「1日3回」「1回2錠」など、数字とアイコンだけで服用方法がわかる表示がされていることが多い。絵を見るだけで使い方が理解できるのは、旅行者にとって非常に心強い。
また、レジでの対応もスムーズだ。免税対応をしている店では、パスポートを提示すれば自動的に処理が進む。購入時に用法を尋ねられることもあるが、ジェスチャーや簡単な英語で対応できる範囲が広く、必要以上に構える必要はない。むしろ、多くの店舗では旅行者への対応に慣れており、やさしい雰囲気で接してくれる。
旅先で不調を感じたとき、日本語が読めないからといって諦める必要はない。今の日本のドラッグストアは、言葉の違いを越えてサポートしてくれる環境が整っている。症状に合わせて薬を選ぶという行為そのものが、その国の暮らし方を体験するきっかけにもなる。
旅行の前に不安を感じるなら、必要な言葉をあらかじめ翻訳アプリに登録しておくのもおすすめだ。現地で検索しやすいよう、商品の写真を保存しておく旅行者も多い。わからないことはその場で聞いてみる勇気があれば、きっとその先に“安心して過ごせる日本”が待っている。
日本語がわからなくても大丈夫。旅の中で感じた不安は、日本のやさしい設計と言葉以外の気配りによって、いつの間にか消えていく。その体験こそが、日本の文化のひとつなのかもしれない。