宮城県の松島は、日本三景のひとつとして知られ、大小260あまりの島々が点在する湾内の風景は、見る者を静かな感動で包み込む。その景観を存分に味わうなら、クルーズ船での遊覧が最良の手段だ。海から眺める松島は、陸上からでは知り得ない奥行きを見せてくれる。一方で、仙台からのアクセスも良く、歴史に名を残す伊達政宗ゆかりのスポットを組み合わせれば、自然と文化が交差する充実の1泊2日旅が完成する。
旅のスタートは仙台駅から。松島海岸駅までは電車で約40分と近く、日中の移動でも十分に観光時間が確保できる。駅を降りれば、すでに穏やかな湾と島々が視界に入り、旅の空気が一変する。まずは遊覧船乗り場へと向かい、湾内をめぐるクルーズに参加したい。所要時間は約50分。船上からは大小さまざまな島々が現れ、その多くは自然が数千年かけて創り上げた造形美そのものだ。波に浸食された奇岩、松の木が生えた小島、鳥たちの営み。それらがゆっくりと通り過ぎていく時間は、言葉よりも感覚で味わう芸術に近い。
クルーズのあとは、周辺の名刹や文化施設へ足を運ぶとよい。特に五大堂は、湾に突き出した小さな高台に建てられた朱塗りの堂宇で、伊達政宗が再建を命じたと伝わる。橋を渡って近づくと、眼下に広がる海の広がりと風の感触が旅の実感を深めてくれる。さらに、瑞巌寺は松島を代表する古刹で、重厚な石垣と杉並木に囲まれた境内は、戦国から江戸に至る歴史の重層を今に伝えている。
宿泊は松島や塩釜エリアの温泉旅館やホテルを選べば、海の幸と湯のぬくもりを同時に楽しめる。新鮮なホタテやカキ、旬の魚を使った料理はこの地ならではの贅沢であり、海を眺めながらの温泉は、観光の疲れをそっと癒やしてくれる。
翌日は仙台市内へ戻り、伊達政宗の足跡をたどる時間としたい。青葉城跡は市街地を一望できる高台にあり、城の遺構と政宗公の騎馬像が、かつての栄華を物語る。周辺には博物館や資料館も充実しており、政宗の人物像により深く触れることができる。
都市と自然、そして歴史を一度に巡るこの旅は、短い日程ながらも内容の濃い時間を約束してくれる。松島の静寂と、仙台の躍動。そのコントラストが、東北という土地の多層的な魅力を印象深く伝えてくれるはずだ。