日本で賃貸住宅に住んでいると、水道の蛇口からの水漏れ、トイレのつまり、浴室の排水の不具合、給湯器の故障など、水回りに関するトラブルは誰にでも起こり得る。こうした不具合が発生した際、「誰が費用を負担するのか」「いつ連絡すればいいのか」「自分で修理してもいいのか」といった判断に迷うことが多い。
特に外国籍の入居者や、日本での賃貸契約に不慣れな人にとっては、こうしたトラブルへの対応や責任の所在を理解していないと、余計な費用を負担したり、契約違反となってしまうこともある。
この記事では、水回りの故障が起きたときに誰が修理責任を負うのかを判断するための基準と、トラブルを未然に防ぐためのヒントを解説する。
原則として「経年劣化」は貸主の責任
日本の賃貸契約では、建物や設備が長期間の使用によって自然に劣化した場合の修繕は、貸主の責任で行うのが原則である。これを「経年劣化による故障」と呼び、たとえば次のような事例が該当する。
-
長年使用された水道蛇口の根本からの水漏れ
-
給湯器が古く、突然お湯が出なくなった
-
排水管が詰まりやすくなっている
-
トイレのタンク部品が摩耗して動作不良になった
こうしたケースでは、借主に故意や過失がなければ、修理や交換の費用は貸主または管理会社が負担すべきものである。契約書に「貸主が設備の保守を行う」と記載されている場合には、すぐに連絡して修理の手配を依頼するのが基本的な流れとなる。
借主の「過失」や「誤使用」による故障は自己負担
一方で、借主の使い方に問題があった場合は、修理費用を借主が負担しなければならない。たとえば以下のようなケースである。
-
トイレに流してはいけないもの(紙以外)を流して詰まらせた
-
キッチンの排水口に大量の油や生ごみを流して詰まらせた
-
蛇口やシャワーヘッドを乱暴に扱って破損した
-
風呂の排水口を清掃せず、髪の毛などが詰まり水が溢れた
これらは借主の注意不足、あるいは清掃の怠りによって発生する「管理上の過失」とされるため、貸主が負担する理由にはならない。トラブル時に「自然に壊れた」と主張しても、調査の結果、使用方法に問題があったと判断されると、修理代を請求されることになる。
緊急時にどう対応するか
水漏れや排水の逆流など、放置すると建物への損害が広がるようなトラブルは、発生直後に速やかに対応することが必要である。対応が遅れたことにより床が腐食したり、下の階に被害が及んだ場合、借主の責任が拡大する恐れがある。
緊急時の基本的な対応は以下のとおりである。
-
まず水道の元栓や給水バルブを閉めて水の流出を止める
-
管理会社または貸主にすぐ連絡する(夜間対応窓口があるか確認)
-
状況を写真に撮って記録する(後日の説明に役立つ)
-
応急処置の必要がある場合は、管理会社に確認のうえで業者を呼ぶ
自己判断で業者を手配し、あとから費用請求をしても認められないことがあるため、原則として貸主や管理会社の指示を仰ぐことが大切である。
設備の不具合は入居時にも確認を
入居したばかりの時点で、水回りに異常を発見することもある。たとえば、蛇口が緩んでいる、浴室の排水口の流れが悪い、洗濯機用の蛇口から水が漏れるなどの事例である。
こうした場合は、入居後すぐに管理会社へ報告し、修繕を依頼することが必要である。報告が遅れると、借主が原因と見なされる可能性があるため、入居初日に全体の設備チェックを行うのが望ましい。
チェックすべきポイントには次のようなものがある。
-
キッチンと浴室の蛇口の開閉と水圧
-
トイレの流れ方とタンクの動作
-
排水口の流れやすさ
-
シャワーの温度調整機能
-
水道メーターの動き(使っていないのに動いているときは水漏れの可能性)
契約書や重要事項説明書の記載を確認
修繕費用の負担に関しては、賃貸契約書や重要事項説明書に「借主負担」「貸主負担」「貸主の判断により対応」などの文言で定められていることがある。とくに、細かい条文に「軽微な修繕は借主負担」と記載されている場合、その範囲がどこまでかを契約時に確認しておく必要がある。
水回りの設備が「設備扱い」とされていれば、故障時には貸主が修理責任を持つのが一般的だが、オプション設備として無償貸与されている場合は修理・交換が自己負担となることもある。
契約時に気になった場合は、不動産会社や管理会社に「水回りの修理はどちらが負担するのか」「緊急時はどう対応するのか」を明確に質問しておくことが、後のトラブルを避ける助けになる。
日常の手入れがトラブル予防につながる
水回りのトラブルを防ぐためには、日常的な手入れと使い方の工夫が有効である。排水口のゴミ受けをこまめに掃除する、異物を流さない、洗剤の使用後はしっかり流す、シャワーヘッドの水滴を拭き取るなど、小さなことでも積み重ねることでトラブルを未然に防ぐことができる。
また、冬場の凍結による給水管の破裂なども発生しやすいため、地域や物件の状況に応じた使い方を確認しておくことも大切である。