関西から車でわずか1時間。神戸から明石海峡大橋を渡ったその先に広がる淡路島は、日常から解き放たれた静かな時間が流れる、関西屈指のリゾート地。観光地をめぐる旅もいいが、あえて「何もしない」ことを目的に滞在するという選択肢が、今注目されている。自然の中に身を置き、予定を立てず、心と体のリズムを整える──そんな贅沢が、この島には似合う。
淡路島の魅力は、その自然環境の豊かさにある。海、山、空が近くにある地形のなか、季節の風に包まれながらゆっくり深呼吸するだけで、体の内側から整っていくような感覚になる。瀬戸内の穏やかな海を望む海岸線には、洗練されたヴィラやリゾートホテルが点在し、オーシャンビューのテラスでコーヒーを飲むひとときは、それだけで非日常の時間となる。
“何もしない”という滞在の中でも、食だけは丁寧に楽しみたい。淡路島は「食材の宝庫」としても知られており、淡路牛や鯛、しらす、玉ねぎなど、地元産の食材が豊富に揃う。ホテルのダイニングや島内の隠れ家レストランでは、旬の素材を活かしたシンプルかつ上質な料理が並び、ひと皿ごとに土地の恵みを感じることができる。
滞在中は、あえてスケジュールを詰め込まず、朝は海辺を散歩し、昼は本を片手にハンモックで過ごし、夜は静かな浜辺で星空を眺める。音も情報も少ない環境のなかで、徐々に頭が静かになり、本来の自分と向き合うような時間が流れ始める。現代の“忙しさ”から一歩離れることでしか得られない感覚が、淡路島では自然と手に入る。
もちろん、少しだけアクティブに過ごしたいときには、島内の美術館やガーデン、海沿いのカフェに立ち寄るのもよい。淡路夢舞台やあわじグリーン館といった施設では、自然と建築が調和した空間で静かな刺激を受けることができる。観光をするというより、“空間に身を預ける”という体験が、この島にはふさわしい。
都会の喧騒からわずか数時間でたどり着けるのに、まるで別世界にいるような開放感と静けさ。何も詰め込まず、何も求めず、ただ五感を開いて淡路島の風土と過ごす。そんな“空白の時間”が、いまの時代にこそ必要とされている贅沢なのかもしれない。