「まるで美術館のようだ――」
これは、東京の建築家が手がけた住宅を訪れた海外の富裕層がしばしば口にする言葉だ。
東京には、ただ高級なだけでなく、“芸術作品”のような住まいが存在する。それが「建築家住宅」と呼ばれるカテゴリー。奇抜さやインパクトだけでなく、素材、動線、光の入り方、風景との関係に至るまで、細部に哲学が宿る建物だ。
近年、香港・シンガポール・タイなどの富裕層の間で「東京の建築家住宅を所有する」というスタイルが密かに人気を集めている。その理由は何か?そして、芸術と不動産の両立がもたらす“資産価値”とは?
■ 世界にひとつしかない、“作品としての家”
建築家住宅とは、著名または実力派建築家が個人の要望に応じて設計した、完全オーダーメイドの住宅のこと。商業物件やマンションとは異なり、「その家だけのコンセプト」が明確に存在する。
たとえば、ある建築家は「家の中に光を描く」をテーマに、1日を通じて変化する自然光が壁に美しい模様を落とすよう設計した。また別の住宅では、外からは見えない中庭を中心に生活が展開するよう、建物全体が静かな“包まれる体験”を提供するよう構成されている。
これらはすべて、既製品では味わえない“感性の贅沢”だ。富裕層が求めるのは、豪華な設備ではなく、「自分だけの物語を持った空間」である。
■ アートマーケットに近い“不動産投資”
建築家住宅は、一般的な住宅と異なり、アートマーケットに近い動きをする。つまり、単なる“築年数”や“駅距離”で価値が決まらないのだ。
設計者が国内外で評価されると、その住宅も“作品”としての価値が上昇する。実際に、伊東豊雄、隈研吾、坂茂といった建築家の設計による物件は、売買時に希少性が評価され、高額で取引されている。なかには数十年経っても価値が落ちないばかりか、“名作住宅”としてコレクター市場に乗るものもある。
つまり、建築家住宅は“暮らす美術品”でありながら、“持つアート投資”でもあるのだ。
■ 東京という“素材”の価値
なぜ建築家住宅が東京で人気なのか?その理由は、東京という都市の“制約”にある。
東京は、土地が狭く、法規制が多い。建築の自由度は低く、一見するとクリエイティブには向かない街のように思える。しかし、だからこそ、建築家は“制約を超える工夫”を凝らす。限られた土地に、開放感、光、自然、アートをどう持ち込むか。その解答としての住宅は、まさに世界に一つしかない“思考の結晶”になる。
この「制約の中の創造性」こそが、海外の富裕層にとって非常に魅力的なのだ。なぜなら、彼らの多くが住む都市は“整ったラグジュアリー”であり、“遊びのある美”が少ないからである。
■ 保有メリットと管理性
意外に思われるかもしれないが、建築家住宅は“管理しやすい”という面もある。
それは、建築家が細部までメンテナンス性を計算しているからだ。床材の張替えや照明の交換、外壁の補修まで、メンテナンスコストを含めて設計されているケースが多い。特に海外富裕層がセカンドハウスや別荘として所有する場合、長期不在になることも多いため、“管理がしやすく美しさが保たれる住宅”は理想的だ。
さらに、住宅の購入とともに設計者のストーリーや図面が引き継がれることも多く、それ自体が“価値の保証書”として機能する。
■ 「人生のギャラリー」を持つという選択
あなたが次に買う不動産は、資産か、贅沢か。
それとも、芸術か。
建築家住宅は、これらすべての問いに「Yes」と答える存在だ。
それはただ住むための“箱”ではなく、感性を満たす“舞台”であり、所有することで人生が豊かになる“ギャラリー”でもある。
東京でしか生まれ得ない建築が、今、世界の富裕層の目に留まり始めている。次に“美術館のような家”を手にするのは、あなたかもしれない。