2025/06/19
言語の壁を越える契約サポートの探し方

日本で賃貸住宅を借りようとする外国籍の方にとって、大きな障壁のひとつが「言語」である。生活する部屋を探し、契約書を読み、重要事項説明を受けるという一連の流れのなかで、すべてが日本語で行われることも少なくない。

日本語が流暢でない場合、「契約の内容が正確に理解できない」「トラブル時にどう説明すればよいかわからない」といった不安を抱えることは自然なことである。実際、言語の壁が原因で契約に至らなかったり、契約後に誤解やトラブルが発生したりする例も少なくない。

この記事では、言語の壁を乗り越えて安心して契約するために利用できるサポートや、不動産会社の選び方、事前に確認しておくべきポイントを解説する。


1. 多言語対応の不動産会社を探す

現在では、インバウンド需要の増加や外国人労働者の増加により、多言語対応を行っている不動産会社も増えている。とくに英語、中国語、韓国語、ベトナム語、タイ語、スペイン語などに対応できるスタッフを配置している会社もある。

探し方のヒント:

  • 外国人専門の賃貸ポータルサイトを利用する
    例:外国人向けの部屋探しを専門とする不動産サイトでは、多言語表示が整っており、スタッフも対応に慣れている。

  • 「多言語対応」「外国人歓迎」のキーワードで検索する
    地域名+「foreigner rental」「多言語対応 賃貸」などの検索ワードで探すと効果的。

  • 在留国のSNSコミュニティやグループで情報を集める
    同じ国の出身者による体験談や紹介が役に立つ。


2. 契約時に通訳サポートが可能か確認する

物件を紹介する不動産会社が日本語のみ対応の場合でも、「通訳を連れてきてもよいか」「通訳アプリの使用が可能か」といった確認を事前にしておくことが大切である。

通訳の手配方法:

  • 友人・家族に同席してもらう(母語が通じる人)

  • 通訳者派遣サービスを利用する(有料・要予約)

  • 一部自治体で提供されている多言語相談窓口を利用する(無料の場合もある)

  • オンライン翻訳アプリを活用(口頭通訳+契約書翻訳補助)

通訳が同席することで、重要事項説明や契約内容を理解したうえで安心して署名することができる。


3. 契約書の翻訳サービスを活用する

契約書や重要事項説明書は、専門用語が多く、日本人でも理解に時間がかかる内容である。日本語に自信がない場合は、翻訳された書類を事前に確認できるかどうかを不動産会社に尋ねることが重要である。

翻訳に関するポイント:

  • 英語や中国語など、一部の言語であれば不動産会社が翻訳版を用意していることがある

  • ない場合でも、「重要な項目だけでも翻訳してほしい」と依頼すると対応してもらえることがある

  • 公的な翻訳者による有料翻訳を依頼することも可能(内容の正確性が高い)

翻訳版はあくまで参考資料とされる場合があるが、理解度を高める助けとなる。


4. 自治体や公的機関のサポートを活用する

多くの自治体では、外国人住民向けに生活や法律に関する相談窓口を設けており、賃貸契約についても相談を受け付けているところがある。

公的な支援例:

  • 国際交流協会などで提供される「外国人相談窓口」

  • 法務省・総務省連携の「多言語生活情報」サイト

  • 外国人向け無料法律相談(日弁連や各地の弁護士会が主催)

  • 一部市区町村での通訳派遣制度(予約制)

地域によってサービス内容は異なるが、「自分一人では交渉が難しい」と感じたときに心強い支援が得られる。


5. 契約時に確認しておくべき重要ポイント

日本語が不自由な場合でも、以下の項目は必ず確認するようにすることが望ましい:

  • 家賃・共益費・保証金・敷金・礼金の金額と支払い方法

  • 支払いの期限と、滞納時の対応

  • 契約期間と解約方法

  • 原状回復と退去時費用の内容

  • 保証人や保証会社の条件

  • ペット、騒音、改造などに関する禁止事項

これらの項目を事前に説明してもらうことで、後から「知らなかった」「聞いていない」というトラブルを防げる。


6. 入居後の生活でも言語サポートが役に立つ

契約時だけでなく、入居後も言語サポートの有無は重要である。たとえば:

  • 設備トラブルを管理会社にどう説明するか

  • ゴミ出しのルールを理解する

  • 近隣トラブルへの対応

  • 契約更新や解約の申請

多言語対応している管理会社であれば、入居後も安心して連絡を取ることができる。逆に日本語しか通じない管理体制の場合、困ったときの対応が遅れる可能性がある。


言葉の壁は「準備」と「選択」で乗り越えられる

言語の壁があるからといって、日本で部屋を借りることが難しいとは限らない。大切なのは、サポートを受けられる体制があるかどうかを最初に確認し、自分に合った不動産会社や契約方法を選ぶことである。

不安を感じることは当然だが、事前に情報を集め、協力してくれる人や機関を見つけることで、安心して新生活を始めることができる。言葉が通じることで生まれる安心感は、住まいだけでなく、その後の生活全体の満足度にもつながっていく。