日本で賃貸住宅を借りる際、契約書には「やってはいけないこと(禁止事項)」が細かく定められている。これらは、貸主が物件の価値を守るため、または住民間のトラブルを防止するために設けられているものであり、借主が誤って違反してしまうと契約解除や損害賠償の対象になることもある。
とくに、日本での賃貸契約に不慣れな外国籍の方や、初めて一人暮らしをする方にとっては、「普通のこと」と思っていた行動が契約違反にあたるケースもあるため注意が必要である。
この記事では、賃貸契約書でよく禁止されている事項を、実際の現場で多く見られる順に整理し、なぜそれが禁止されているのか、違反した場合にどのようなリスクがあるのかを解説する。
1. 無断での転貸・名義貸し
もっとも重い違反とされるのが、借主が第三者に部屋を貸したり、契約者本人以外が実質的に居住するケースである。
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無断で友人に住まわせる
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契約者が不在で、家族や恋人が代わりに住む
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サブリース(また貸し)として一部を他人に貸す
これらはすべて契約違反であり、即時契約解除や強制退去の対象になる可能性がある。
2. ペットの飼育(条件付き含む)
多くの賃貸物件では、「ペット不可」が明記されている。とくに犬や猫などの動物は、においや騒音、傷の原因となるため、明確に禁止されている。
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小型犬だから問題ないと思い込む
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一時的な預かりであっても禁止される
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契約上「ペット相談可」でも、事前申請や追加費用が必要
無断飼育が発覚した場合、特別清掃費用や壁紙・床の全面張り替え費用を請求されることがある。
3. 楽器の演奏
楽器の使用は、多くの物件で明確に制限されている。
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ピアノ、ギター、ドラムなど音量の大きい楽器
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電子ピアノであっても打鍵音や振動で苦情が出る
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演奏時間を限定しても、近隣からのクレームにつながりやすい
「楽器可」と明記された物件以外での演奏は原則として避けるべきである。
4. 喫煙(特に共用部やバルコニー)
室内での喫煙が禁止されていない場合でも、次のような形での喫煙は多くの物件で制限されている。
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バルコニーでの喫煙(においや煙が上階・隣室に届く)
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共用廊下やエレベーターでの喫煙
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タバコのにおいによる壁紙や設備の変色・ヤニ汚れ
退去時に通常の清掃費とは別に、消臭費や壁紙交換費を請求されることがある。
5. ゴミ出しルールの違反
日本のゴミ出しルールは地域によって異なり、自治体が細かく定めている。以下は違反とみなされる行為である。
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指定の曜日以外に出す
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分別が不十分
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指定の袋を使わない
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深夜や前日のうちにゴミを出す
悪質な場合、近隣住人とのトラブルに発展し、管理会社から警告を受ける可能性がある。
6. 共用部への私物放置
廊下、階段、エントランス、ゴミ置き場など、共有スペースに私物を置くことは、多くの契約で禁止されている。
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傘立て、自転車、ベビーカーの放置
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ダンボールや家具の一時保管
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鉢植えや私物の装飾
共用部は消防法の観点からも「無障害」である必要があり、強制撤去や清掃費用請求の対象となることがある。
7. DIY・内装変更・壁への穴あけ
入居者による室内の改造は、原則として禁止されている。
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壁に穴を開けて棚やテレビを設置する
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クロスを貼り替える、塗装する
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床材をはがして自分で張り直す
原状回復の義務があるため、無断で行った場合、退去時に全額自己負担での修復が求められる。
8. 騒音・振動の発生
深夜の生活音や音楽、大声での通話など、音に関するマナー違反は、非常にクレームが多いポイントである。
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洗濯機や掃除機を深夜に使用する
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重低音の音楽を繰り返し流す
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スマートフォンで動画をスピーカー再生する
「音を出す行為」自体ではなく、「他人の生活を妨げるレベルかどうか」が判断基準になる。
9. 無断での設備設置・取り外し
エアコンや照明、ガス機器などの設備に関して、勝手に変更・取り外しを行うことは契約違反である。
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勝手にエアコンを撤去し、処分する
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ガスコンロを設置して配管を変更する
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インターネット回線の新規工事を行う(共用部工事を含む)
変更を希望する場合は、必ず事前に管理会社または貸主の承諾を得る必要がある。
10. 事業・営業目的での使用
住居用物件は、居住を目的として契約されているため、以下のような使い方は制限されている。
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自宅で店舗営業や来客対応を行う
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オンライン販売の発送業務拠点とする
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セミナーや撮影スペースとして運用する
物件によっては「SOHO可」「事務所利用相談可」とされているものもあるが、それでも用途や業種に制限が設けられることが多い。