標高約1000メートル、豊かな森と洗練された街並みが調和する長野県・軽井沢は、日本を代表する避暑地として長年愛されてきた。新幹線を使えば東京から約1時間というアクセスの良さから、日帰りで訪れる人も多いが、実はこの街の本当の魅力は、時間をかけて滞在することでじっくりと感じられる。2泊の滞在を前提にした旅こそ、軽井沢の奥行きに触れる最善のスタイルだ。
初日は定番エリアである旧軽井沢銀座通りの散策からスタート。石畳の小道にはクラシックな洋館を改装したカフェや雑貨店が並び、ショッピングと食べ歩きが同時に楽しめる。老舗ベーカリーの焼きたてパンや地元産ブルーベリーを使ったスイーツは、この地ならではの味覚。喧騒を離れて小径を一本入れば、木漏れ日が差し込む静寂な時間が待っている。
夜は森に囲まれたリゾートホテルや一棟貸しヴィラなど、自然と共に過ごせる宿での滞在を選びたい。軽井沢の宿は、空間に“間”を大切にしており、都会では得られないゆとりがある。客室のテラスや暖炉、森に面した貸切風呂など、滞在そのものが体験になる設えが揃っている。
2日目は少し足を延ばし、軽井沢の自然と文化を巡る。朝は「雲場池」や「石の教会」で清々しい空気を吸い込んだら、「星野エリア」へ向かいたい。モダンな建築と自然が融合したこのエリアでは、温泉施設「トンボの湯」やブックカフェ、レストランが点在し、半日過ごしても飽きない。鳥のさえずりや風の音に耳を傾けながら、ゆったりと読書や食事を楽しむ時間は、短い滞在ではなかなか得られない贅沢だ。
夕方は軽井沢高原教会や周辺の森を散策して、日が暮れる頃には宿に戻ってディナーを堪能。フレンチやイタリアン、地元の食材を生かした創作和食など、レベルの高いレストランが揃っており、どこを選んでも旅の記憶に残る一皿に出会える。予約が必要な人気店も多いため、事前の計画が鍵となる。
3日目はアウトレットでのショッピングや、美術館巡りで締めくくるのもよい。軽井沢プリンスショッピングプラザは豊富なブランドが並ぶ大型モールで、自然光を取り入れた設計と芝生広場が心地よい。帰りの新幹線に合わせて、のんびりとお土産探しやカフェでの休憩を楽しめば、余韻を引きずらない、気持ちの良い旅の終わりを迎えられる。
軽井沢は、せわしない観光地巡りではなく、過ごし方そのものを楽しむ場所だ。2泊の滞在でこそ、気温のやわらかさや空気の透明感、そして“時間の静けさ”に気づくことができる。日帰りでは見えない景色が、泊まることで見えてくる。避暑地の真価を味わうなら、慌てず、構えず、2泊が正解だ。