2025/06/19
退去時の立会いで揉めないための準備とは?

賃貸住宅を退去するときに避けて通れないのが、**「退去立会い」と呼ばれる管理会社(またはオーナー)との最終チェックの場である。
この立会いは、原状回復の範囲やクリーニング費用の確認、敷金の精算額に直結する重要なステップだが、実際にはここで
「思ったより高額な修繕費を請求された」「納得できない項目があった」**というトラブルが起きるケースも少なくない。

そこで本記事では、退去時の立会いで揉めないために、事前に準備しておくべきこと、当日のチェックポイント、万が一トラブルになった際の対応方法を詳しく解説する。


そもそも「退去立会い」とは?

退去立会いとは、入居者が引っ越し後に部屋を空にした状態で、管理会社やオーナーと一緒に部屋の損耗状況や汚れ、破損の有無を確認する作業のこと。

この場で確認された内容をもとに、以下が決まる:

  • 原状回復費用の負担割合

  • 敷金の返還額

  • 修繕・クリーニングの範囲と金額

  • 鍵の返却と正式な退去完了


揉めやすい原因トップ3

  1. 「普通の使い方だったのに、修理費を請求された」

  2. 「入居時にあった傷なのに、退去時に自分の責任と言われた」

  3. 「説明のない費用が見積書に入っていた」

これらはすべて、事前の確認不足や証拠の不在から起こりやすい。


退去立会いで“揉めないための準備”リスト

✅ 1. 入居時の記録(写真・チェックリスト)を保存しておく

入居時に「すでにあった傷・汚れ」の写真を撮っておくと、退去時に自分の責任ではないことを証明できる。特に以下の箇所は要撮影:

  • 壁紙の破れ・汚れ

  • 床の傷やへこみ

  • ドアや窓の建付け不良

  • 浴室やキッチンの設備劣化

※スマホのカメラでOK。撮影日がわかる形式で保存しておくとベター。


✅ 2. 原状回復の基準(ガイドライン)を理解しておく

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、以下のように定められている:

  • 経年劣化や通常損耗は借主の負担ではない

  • 借主の故意・過失・不注意による損傷は借主負担

例:

  • 壁紙の日焼け、家具跡 → 経年劣化(貸主負担)

  • タバコのヤニ汚れ、壁への釘穴 → 借主負担

ガイドラインは誰でも閲覧できるため、一読して基準を把握しておくと主張に説得力が増す。


✅ 3. 室内の清掃をしておく(自分のため)

ハウスクリーニングは管理会社が行うとしても、軽い掃除やゴミの撤去をしておくことで印象が良くなる
汚れや放置されたものがあると、「だらしない退去」と見なされ、必要以上の費用を請求されやすくなる。

重点ポイント:

  • キッチン・レンジフードの油汚れ

  • 浴室のカビ・排水口の髪の毛

  • 壁紙のシール・フック類の撤去

  • 鍵の本数確認(紛失時は交換費用発生)


✅ 4. 修繕や交換が必要なものがあれば申告しておく

小さな破損や汚れは、隠すのではなく正直に申告した方がトラブルになりにくい。
自己申告することで、「軽微な修繕」として扱ってもらえることもある。


退去立会い当日のチェックポイント

  • 修繕箇所について、その場で納得できない場合は「見積書を後日もらってから判断」と伝える

  • その場で同意やサインを迫られても、即答しなくてよい

  • 写真を撮る or 管理会社に写真撮影をお願いする

  • 請求額があいまいな場合は「明細書をください」と依頼する


万が一トラブルになったらどうする?

▶ 敷金精算書の内容に納得できない

→ 「精算書の内訳」「修繕箇所の写真」「業者の見積もり」の提示を求める。
→ 内容によっては、内容証明での異議申し立てや、消費生活センターへの相談も検討する。

▶ 明らかに過剰な請求をされた

→ 「ガイドラインに反している可能性があります」と冷静に伝える。
→ 自治体の宅建協会や弁護士相談(法テラスなど)も活用可能。


トラブル防止のカギは「証拠」と「冷静な態度」

  • 感情的にならず、事実ベースで対話する

  • サインを求められたら「持ち帰って確認します」と一言

  • メールや書面でのやり取りを心がける(記録が残る)


退去立会いは“対立”ではなく“確認作業”

立会いは本来、貸主と借主がお互いに状況を確認し、納得して契約を終えるための場である。
無用なトラブルを避けるためには、「事前の記録」と「基本的な知識」が何よりの武器になる。

誠実に使った部屋であれば、必要以上の費用を負担する義務はない
退去立会いは、「退去するその日まで“気持ちよく終える”ための最後のステップ」と考え、冷静に備えておきたい。