2025/06/17
退去時の違約金条項がある物件に注意

「引っ越しは自由」と思っていたら、退去時に思わぬ請求が――。
賃貸住宅の契約書をよく読むと、**「契約期間中の解約には違約金が発生します」**といった条項が記載されているケースがある。

この「違約金条項」、気づかずに契約してしまうと、予期しない費用を支払わされるリスクがある。
本記事では、退去時の違約金とは何か、どのようなケースで発生するのか、契約前に何を確認すべきかを事実に即して解説する。


違約金とは?敷金や更新料とは別モノ

「違約金」とは、契約に定められたルール(=約束)を破った場合に支払うペナルティのこと。
賃貸契約における違約金とは、契約期間の途中で借主側が退去する際に発生する費用を指すことが多い。

これは、敷金(預かり金)や礼金(謝礼)・更新料(契約延長料)とは別で、「早期退去」に対して貸主が損失補填として請求する費用である。


よくある違約金の記載例

契約書や特約条項には、以下のような形で記載されていることがある:

  • 「本契約は2年間の定期借家契約とし、1年未満で解約した場合は違約金として賃料1ヶ月分を支払う」

  • 「契約期間中に中途解約した場合、賃料の2ヶ月分を違約金として支払うこととする」

  • 「フリーレント適用の場合、6ヶ月未満の解約で相当額を違約金として支払うこととする」

→ 特に「特約」「備考欄」「別紙」などに小さく記載されていることが多く、見落とされやすい。


違約金が発生する具体的なケース

ケース 違約金が発生する可能性
契約開始から半年で自己都合退去 高確率で発生(契約内容次第)
フリーレント(家賃無料)付き物件で3ヶ月後に退去 条件違反とされ、違約金請求あり
入居時に「最低1年居住が条件」と言われた物件 特約に基づき、1年未満の退去で違約金が発生する場合がある

契約自由の原則により「有効」とされる

日本の賃貸契約は「契約自由の原則」があるため、借主と貸主が合意した内容が契約書に書かれていれば、原則として法的に有効と判断される。

つまり、たとえ違約金の金額が大きくても、

  • 契約書に明記されている

  • 借主が署名・捺印している

という事実があれば、後から「知らなかった」は通用しない


契約前に確認すべきポイント

  1. 契約期間と解約のルール
     → 「2年契約」「更新型」「定期借家」など形式を確認。特に定期借家は再契約なしの可能性も。

  2. 解約通知の期限
     → 一般的には「1ヶ月前予告」だが、2ヶ月や3ヶ月とされている場合もある。

  3. 違約金条項の有無と金額
     → 家賃の1ヶ月分か、2ヶ月分か、あるいはフリーレント分の返金義務など具体的にチェック。

  4. フリーレント物件の特約条件
     → 「◯ヶ月未満の退去で全額返還」など、無料期間の恩恵には条件があることが多い。


トラブル例:知らずに違約金が発生したケース

  • 学生が半年で実家に戻ることになり、違約金として家賃2ヶ月分を請求された

  • フリーレント1ヶ月付きの物件で、4ヶ月で退去しようとしたところ、1ヶ月分の家賃を追加請求された

  • 「契約時には説明されていなかった」と主張するも、契約書の特約欄に小さく記載されていた

→ 契約書をよく読み、説明がない場合は自分から質問を。


違約金を回避・軽減するための対策

✅ 契約時に「違約金はありますか?」と確認し、書面に記録

→ 担当者の口頭説明だけでなく、必ず契約書で再確認する

✅ フリーレントや短期特約の物件は慎重に選ぶ

→ 安さの裏には「早期退去にペナルティ」が隠れている場合あり

✅ 解約のタイミングは“契約満了月の末日”を意識する

→ 「満了月の中旬に出てしまったために1ヶ月分損した」ということを防ぐ

✅ 引越し予定があいまいな場合は「違約金なしの物件」を選ぶ

→ 初期費用は多少高くても、自由度が高くなる


違約金は「不当」ではなく「契約で決まる」

違約金は、「払いたくないから無効」というわけにはいかない。
一方で、納得せずに契約してしまうと、自分にとって不利益な支払い義務を背負うことになる。

だからこそ大切なのは、契約書をすみずみまで読むこと、特約欄を見逃さないこと、わからない表現は質問すること
それが、後悔のない賃貸契約への第一歩だ。