東京・銀座――。それは“日本で最も洗練された街”と称され、世界中のセレブが訪れる場所だ。高級ブランドのフラッグシップストアが立ち並び、寿司、和牛、割烹といった一流グルメも集まるこのエリアに、近年「住む」という選択をする富裕層が増えている。特に顕著なのが香港をはじめとする中華圏の超富裕層たちだ。
なぜ、観光や買い物ではなく、“銀座の徒歩圏に家を持つ”というライフスタイルが注目されているのか。その背景には、香港との共通点と決定的な違い、日本という国への信頼、そして東京が持つ独特の都市構造が関係している。
■ 香港と銀座、都市としての共通点
まず、銀座の人気を語るには“香港との親和性”を理解する必要がある。香港の中心地・中環(セントラル)やチムサーチョイのように、銀座は都市機能がコンパクトに集約された街だ。徒歩圏にラグジュアリーブランド、高級レストラン、アートギャラリー、オフィスが揃い、車を使わずともすべてが完結する。
この「街ごとハイエンドな生活圏が完結する構造」は、香港の富裕層にとって非常に馴染みやすい。また、香港では都市部に住まうこと自体がステータスであり、郊外よりも中心地に家を持つ文化があるため、“銀座徒歩圏の家”というのは、まさに価値観が一致する場所だと言える。
■ なぜ“銀座に住む”ことが今注目されているのか
以前は「銀座=商業エリア」「住む場所ではない」という認識が一般的だった。しかし2020年代に入り、都市開発やインバウンド需要の変化により、高級マンションの建設が相次いでいる。たとえば、銀座8丁目・新橋・築地・東銀座といった周辺エリアには、デザイナーズ物件や超高層レジデンスが次々と誕生している。
これらの物件は、単に“近い”だけでなく、「銀座の夜景が眼下に広がる」「歌舞伎座が徒歩2分」など、圧倒的な“日常の特別感”を提供してくれる。富裕層にとって、これはホテルにはない体験だ。しかも、香港に比べて“圧倒的に割安”なのだ。
■ 「価格差」と「税制優遇」が決め手
現在、銀座徒歩圏にある築浅の高級マンションは、1億円〜3億円が相場。しかし、香港で同等のラグジュアリー物件を手に入れようとすると、5〜6億円を超えるのが当たり前。単純に「同じラグジュアリーを2分の1以下で持てる」のが、東京・銀座なのである。
また、日本の固定資産税・相続税・不動産取得税は、香港やシンガポールに比べてはるかに低水準。これにより、長期保有がしやすく「次世代への資産継承」も視野に入れられる。すでに香港では、法人名義で購入し日本に法人設立を行うケースや、家族信託で相続を組む富裕層も増えてきている。
■ 銀座に家を持つことは“特権”である
銀座徒歩圏のマンションは、供給そのものが非常に限られている。高度な建築制限、景観条例、文化保全によって、大型開発が容易でないからだ。つまり、「欲しくても、買える数が限られている」。この希少性が、まさに“価値”を生む。
世界の富裕層が求めるのは、派手な贅沢ではない。「その土地の文化を肌で感じながら、洗練された都市生活が送れること」。銀座徒歩圏という立地は、その両方を最高のバランスで提供してくれる。
■ “住まう銀座”という、新たなステータス
かつて銀座は、買い物や接待に使う“外の街”だった。しかし今では、“日常を過ごす内なる場所”として、世界のセレブたちがその価値に気づきはじめている。
香港、シンガポール、ドバイ、ニューヨーク…。そのどこにもない、「洗練」と「文化」が同居する街──それが銀座だ。そこに家を持つことは、住まいを超えた“生き方の選択”かもしれない。