2025/06/28
鳥取砂丘と砂の美術館|日本唯一の“砂の世界”を歩く旅

日本で“砂漠”のような風景を思い描いたとき、真っ先に名前が挙がるのが鳥取県の「鳥取砂丘」。日本最大級の広さを誇るこの砂丘は、海と砂が織りなす独特の風景で知られ、四季や時間帯によってまったく違う表情を見せてくれる。さらに隣接する「砂の美術館」では、砂だけで作られた精緻な彫刻作品が並び、芸術としての“砂”の可能性に出会うことができる。自然とアートが融合するこの地で、世界にひとつだけの“砂の旅”を体感してみたい。

鳥取駅から車やバスで約20分、鳥取砂丘は日本海に面した東西約16km、南北約2kmにもおよぶ広大な砂地。訪れた瞬間、目の前に広がる風紋と砂の丘は、まるで海外の砂漠に立ったかのような異国情緒に包まれる。裸足で歩けば、さらさらとした感触とともに、足元から非日常が始まっていく。

なかでも人気なのが「馬の背」と呼ばれる高さ約47メートルの砂丘の斜面。頂上まで登れば、日本海と砂の地形が織りなす圧巻のパノラマが広がる。早朝は朝日が砂に長い影を落とし、夕方には赤く染まる空と海が幻想的な風景をつくりだす。風の強い日には、自然が描く「風紋」がよりくっきりと現れ、まるでアートのような模様に魅了される。

アクティブ派には、パラグライダーやサンドボードなど、砂丘ならではのアウトドア体験も人気。一方で、のんびり歩きながら写真を撮ったり、風景の移ろいを眺めたりするだけでも、十分に心が洗われる場所だ。

そして忘れてはならないのが、「砂の美術館」。鳥取砂丘のすぐそばにあり、「砂で世界旅行」をテーマに、毎年異なる国や地域をモチーフにした砂像が展示される。数メートルを超える巨大な彫刻群が、すべて砂と水だけで作られているという驚きと、その精巧さに思わず息をのむ。照明や展示演出にもこだわりがあり、アートとしての砂の魅力にじっくり向き合うことができる。

館内は屋内展示のため、天候を気にせず楽しめるのも魅力。アーティストによる制作過程の映像や、展示作品のテーマに沿った文化紹介も充実しており、大人から子どもまで学びと感動のある時間が過ごせる。

旅の締めくくりには、砂丘センターやカフェでご当地グルメを楽しむのもおすすめ。鳥取和牛や地元野菜、梨を使ったスイーツなど、山陰ならではの味覚がそろっている。お土産には「砂丘らっきょう」や「砂たまご」といった、ユニークなご当地商品もぜひチェックしたい。


鳥取砂丘と砂の美術館は、自然とアートが交差する唯一無二の空間。風に揺れる砂、職人の手で刻まれた砂像、そして静かに流れる時間。日本でありながら、日本を超えたような感覚が味わえる旅先として、一度は訪れておきたい“砂の聖地”だ。