2025/07/03
麦茶ってどう作るの?親子で体験する焙煎の旅 香ばしさの正体を、自分の手で確かめる

夏になるとどの家庭にもあたりまえのように冷えている麦茶。その香ばしくてすっきりとした味は、子どもから大人まで親しみのある存在だが、「どうやって作られているか」を知っている人は意外と少ない。そんな“身近な飲み物”をテーマにした体験が、「麦茶ってどう作るの?親子で体験する焙煎の旅」である。

このプログラムでは、麦茶の主な原料である大麦がどう育ち、どのように加工され、あの香りと味になるのかを、実際に手を動かしながら学んでいく。体験の舞台は、農業体験施設や地元の製茶場、食育センターなど。自然に囲まれた地域で、土と火と香りを通じて麦茶の“正体”に迫る旅が始まる。

最初のステップは、焙煎前の大麦にふれること。皮付きの麦、精麦されたつるんとした粒、それぞれを手に取り、観察してみると、スーパーで売っている「麦茶パック」とはまるで違う素材感に驚かされる。触る、においをかぐ、砕いてみる。大麦そのものと向き合うことで、麦茶が“麦”からできていることを、改めて実感する。

次は、焙煎機や鉄鍋を使って、実際に麦を煎る工程へ。火を扱う工程は大人とスタッフがしっかりサポートするが、子どもたちも木べらを使って混ぜたり、色の変化を観察したりと、五感を使って参加できる。麦が徐々に色づき、香ばしい匂いが立ち上ると、参加者の表情がぱっと変わる。その瞬間、飲み慣れた麦茶が“自分の手で生まれた香り”へと姿を変える。

焙煎が終わると、粗熱を取ってから麦茶づくりへ。煮出し用と水出し用の両方の抽出方法を教わり、自分で煮出したお茶をコップに注いで味わう。香りの立ち方、色の濃さ、味のまろやかさ──同じ原料でも煎り方や抽出法で違いが出ることに気づくと、麦茶という飲み物の奥深さに驚かされる。

さらに、地域によっては、大麦を使った菓子やパンの試食が用意されていたり、麦わらを使ったクラフト体験ができたりと、麦という素材の広がりを体感できる内容が充実している。親子での参加では、子どもが「自分で煎った麦茶」を家族にふるまうという流れになり、誇らしげな表情が旅のハイライトになることも多い。

外国からの旅行者にも好評で、日本の夏を象徴する飲み物として麦茶の文化を紹介しながら、シンプルな素材に込められた知恵と工夫にふれてもらうことができる。多言語対応のガイドやレシピカードもあり、帰国後も自分で麦茶づくりに挑戦できるようなフォローも整っている。

この体験は、身近なものの裏側を知るという意味で、単なる調理体験にとどまらない。「なぜこの味がするのか」「どうやってつくるのか」「誰が手をかけているのか」といった問いに、自然と気づきを促してくれる。麦茶という何気ない存在をとおして、食べものの奥にある物語を学ぶ、静かであたたかい時間が広がっていく。

毎日のように飲んでいたものを、自分の手でつくって飲んだとき、それはもうただの麦茶ではない。旅の途中で出会った香りと味が、家に帰ってからもそっと続いていく。