日本で外国籍の人が賃貸物件を借りようとする場合、多くの不動産会社や貸主が「在留カードの提示」を求める。これに対して、「在留カードがなければ部屋は借りられないのか?」と疑問を持つ人も少なくない。短期滞在や留学、就労、家族の帯同など、さまざまな在留資格で日本に滞在している人にとって、居住地の確保は生活基盤の第一歩である。
実際には、在留カードの提示はほぼ必須とされるが、それだけでは不十分なこともあり、契約には複数の書類や条件が求められる。この記事では、日本の賃貸契約において外国籍の人が必要とされる書類の種類や目的、それぞれの確認ポイントを事実に即して解説する。
在留カードとは何か
在留カードとは、外国籍の人が日本に中長期的に滞在する場合に発行される身分証明書である。日本国内においては、法律上、常時携帯と提示義務があるとされており、滞在資格や在留期間、在留資格の種類、住居地などの情報が記載されている。
日本で賃貸契約を行う際には、「本人確認」「滞在資格の有効性」「滞在期間の明確化」といった観点から、在留カードの提示が求められる。特に、保証会社の審査においては、在留カードの提示は必須書類とされることがほとんどである。
このカードがあることで、貸主はその人が日本に合法的に滞在しており、一定期間にわたって家賃の支払いが可能であると判断できるため、本人確認書類としての役割が大きい。
在留カードがない場合の制限と対応
観光などの短期滞在で来日している人には在留カードは発行されていない。そのため、滞在資格が「短期滞在」となっている場合には、賃貸契約を結ぶことが非常に難しいのが現実である。
賃貸契約は通常1年以上の長期居住を前提としており、保証会社の利用も長期滞在者向けに設計されているため、短期ビザの人には適用できないことが多い。こうした場合には、ホテルやマンスリーマンション、シェアハウスなど、短期契約に対応した施設を利用することが一般的である。
なお、入国直後でまだ在留カードを取得していない場合には、入管の発行する仮証明や旅券の上陸許可印を提示して、入居時の対応を相談できることもあるが、これは非常に限定的なケースであり、基本的には在留カードの取得後に手続きを進めることが望ましい。
賃貸契約に必要とされる主な書類一覧
賃貸契約を結ぶために必要な書類は、借主の国籍にかかわらず一定の共通項目があるが、外国籍の場合は追加で求められる書類がある。以下は、一般的に必要とされる書類の一覧である。
在留カード(Residence Card)
有効な在留カードが必須とされる。表面と裏面のコピーが求められることが多く、滞在資格と期間が確認される。カードの期限が契約期間中に切れる場合は、更新予定の有無を事前に伝えることが重要である。
パスポート(Passport)
本人確認と入国履歴の確認のためにパスポートの提示が求められることがある。特に、在留カードが交付されて間もない場合や、在留期間の証明に不安がある場合に添付が求められる。
住民票(Certificate of Residence)
日本国内に住民登録をしていることを証明するための書類。住民票には現在の住所、氏名、国籍、在留資格などが記載される。住民登録が済んでいない場合には、契約が認められないことがある。
収入証明書(Proof of Income)
家賃支払い能力を証明するための書類。就労している場合は給与明細や雇用契約書、源泉徴収票などが該当する。学生の場合は、奨学金受給証明書や仕送り証明などが代替資料となることがある。
在職証明書または学生証
現在の所属機関を証明する書類。在職証明書は勤務先が発行する書類で、在籍確認や雇用形態、契約期間などが記載されている。学生の場合は、学生証や入学許可証などが必要になる。
緊急連絡先情報
日本国内における緊急時の連絡先が求められる。友人や勤務先、学校の担当者、日本語が通じる第三者など、本人と別の人物を指定する必要がある。保証人とは別に設定するケースも多い。
保証会社関連書類
外国籍の借主に対しては、個人保証人を立てることが難しいケースが多いため、保証会社の利用が必須とされる。保証会社に提出する書類として、上記の書類のほか、専用の申込書、同意書、在留カードのコピーなどが求められる。
書類の不備で審査に落ちることもある
必要書類の提出が遅れたり、不備がある場合には、審査が通らない原因になることがある。とくに保証会社は、在留資格や就労状況、収入の安定性を重視する傾向があるため、書類の内容に矛盾があると信用を損ねることになる。
また、在留期限が契約期間より短い場合には、保証会社がリスクを理由に否認することもある。このような場合は、更新予定であることを説明し、更新見込みの証明書や勤務先からの証明を準備すると交渉がしやすくなる。
すべての書類は、原本確認とコピーの提出が求められることが多いため、あらかじめ2部以上準備しておくとスムーズである。
契約前に確認すべきポイント
外国籍の人が日本で賃貸契約を結ぶ際には、書類以外にも確認しておくべき点がある。とくに以下のような項目に注意しておくことで、トラブルを回避しやすくなる。
まず、契約書の言語と内容。日本語が読めない場合には、翻訳資料や通訳サポートがあるかどうかを確認する。契約内容に理解が及んでいない場合、退去時の費用やルールに関するトラブルが生じやすい。
次に、外国籍入居者に慣れた不動産会社や管理会社を選ぶこと。外国人対応に慣れていない場合、手続きに時間がかかったり、契約の途中で条件が変わることもある。
最後に、保証会社が外国籍に対応しているかどうかも確認しておく。すべての保証会社が外国籍に対応しているわけではなく、特定の国籍やビザタイプに制限を設けている場合がある。