日本で部屋を借りたいと考える外国籍の人にとって、賃貸契約のプロセスは多くの壁に直面する場面がある。言語の違いだけでなく、契約慣行、必要書類、保証制度、審査基準など、日本独自の文化やルールに戸惑うことも少なくない。
実際、日本の賃貸市場では、外国籍の入居者に対して追加の確認や制限が設けられることがある。物件情報の段階では「外国人OK」と記載されていても、審査が通らなかったり、条件が不明瞭だったりと、思うように契約が進まないことも起きうる。
しかし、いくつかのポイントを事前に押さえ、準備と工夫をしておくことで、外国籍であっても日本国内でスムーズに賃貸契約を進めることは十分に可能である。この記事では、外国籍の人が日本で安心して部屋を借りるために知っておくべきコツを、実務に即して詳しく解説する。
1. 日本語対応が可能な不動産会社を選ぶ
まず最初に重要なのは、日本語以外に対応できる不動産会社やスタッフを探すこと。大都市圏を中心に、英語、中国語、韓国語、ベトナム語などに対応している会社が増えているが、すべての地域や会社が多言語対応しているわけではない。
インターネットで物件を検索する際には、「外国人対応可能」や「English OK」などのキーワードを活用することで、多言語対応の実績がある会社を見つけやすくなる。また、外国籍入居者向けの専門サイトや紹介制度を活用するのも有効である。
内見や契約時に説明が不十分なまま進んでしまうと、後からトラブルに発展するリスクがあるため、言語面での安心感は物件選びと同じくらい重視すべきポイントである。
2. 必要書類をあらかじめ揃えておく
日本で賃貸契約を結ぶには、外国籍の人であっても日本人と同様に、本人確認や収入証明に関する書類が必要となる。とくに以下の書類は早い段階で準備しておくと、物件申し込みから契約までの流れがスムーズになる。
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在留カード(両面のコピー)
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パスポート(身分ページのコピー)
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住民票(住所登録済であれば)
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収入証明書(給与明細、雇用契約書、奨学金証明書など)
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在職証明書または学生証
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緊急連絡先(日本在住者が望ましい)
これらの書類が不備だったり、有効期限が短かったりすると、保証会社の審査が通らない場合がある。滞在期間や在留資格と契約期間が合っているかどうかも見られるため、事前の確認が重要である。
3. 保証会社の利用を前提にする
日本の賃貸契約では、家賃支払いの滞納リスクを回避するため、連帯保証人の代わりに保証会社を利用するケースが主流となっている。外国籍の人にとっては、信頼できる日本人保証人を見つけることが難しいことも多いため、保証会社の利用はほぼ必須と考えてよい。
保証会社を利用するには、所定の申込書を記入し、収入状況や在留資格の審査を受けることになる。審査基準は会社によって異なるが、収入が不安定だったり、在留期間が契約期間に満たない場合は、補足書類の提出や緊急連絡先の指定を求められることがある。
自分の属性に合った保証会社を扱っている不動産会社を選ぶことで、審査通過の可能性が高くなる。また、複数の保証会社に対応している業者であれば、審査に落ちた場合でも別の会社に切り替える柔軟性がある。
4. 希望条件を柔軟に設定する
外国籍の借主に対して、貸主が慎重になる理由のひとつは「トラブルを避けたい」という心理である。そのため、希望条件が厳しすぎると、物件の選択肢が狭まってしまう可能性がある。
たとえば、「ペット可」「家具付き」「駅から5分以内」「築浅」「短期契約可」といった条件が重なると、対応可能な物件が限られる。また、「外国人不可」とは明示されていなくても、審査に通りにくい物件も存在する。
エリア、家賃、築年数、契約期間など、どこかの条件に柔軟性を持たせることで、選択肢が広がりやすくなる。特に初めての契約では、「長く住めるかどうか」よりも「まず住めるかどうか」に軸足を置いた検討が現実的である。
5. 生活マナーや文化の違いを理解する
賃貸契約が無事に成立しても、生活の中で地域社会とのトラブルが起きると、退去を求められたり、契約更新を拒否されることがある。日本の住宅環境では、音・におい・ゴミ出しなど、日常の細かいマナーが重視される傾向が強い。
とくに注意したいのは、夜間の騒音、共用部の使い方、ゴミの分別・出し方など。国によっては当たり前の行動であっても、日本では「迷惑行為」と見なされることがある。事前に地域のルールを確認し、不明な点は管理会社に相談する姿勢が求められる。
また、入居者全体で共有する設備(廊下、エレベーター、駐輪場など)は「私有物ではない」ことを理解し、共用の意識を持つことが円滑な居住に欠かせない。
6. 入居後のサポート体制を確認する
物件選びの段階で、入居後のサポート体制を確認しておくことも大切である。特に日本語が苦手な場合、管理会社や保証会社との連絡手段が限られてしまうと、修理やトラブル対応に時間がかかることになる。
管理会社が外国語に対応しているか、メールでの連絡が可能か、翻訳アプリの利用を受け入れているかなど、コミュニケーション手段についても契約前に確認しておくと安心できる。
水漏れ、鍵の紛失、電気設備の故障など、日常的に起こりうるトラブルはすぐに対応が必要になるため、緊急時の連絡先と対応時間を明確にしておくことで、住み始めてからのストレスを減らせる。