日本で賃貸物件を探すとき、多くの人が最初に注目するのは「家賃」である。毎月いくら支払うのかを判断する材料として家賃はわかりやすいが、実際に生活を始めてみると「毎月の支出が思っていたよりも多い」と感じることもある。
それは、家賃以外にも定期的に発生する費用があるためである。契約時に説明されていたはずの金額でも、見落としていたり、想定以上にかかるケースもある。月々の予算を正しく把握し、無理のない生活設計をするためには、家賃以外の「毎月の出費」を正確に理解しておくことが重要になる。
この記事では、賃貸住宅で暮らすうえで発生する月額費用の中から、家賃以外に見落としがちな支出について実務に基づいて解説する。
共益費・管理費
物件情報を見ると、家賃とは別に「共益費」または「管理費」が記載されていることがある。これらは建物の共用部(エントランス、廊下、階段、エレベーター、ゴミ置き場など)の清掃・照明・保守点検などのために支払う費用である。
金額は物件によって異なるが、月額3000円から1万円程度が一般的である。とくにオートロックや宅配ボックス、防犯カメラなどの設備があるマンションでは高めに設定される傾向がある。
家賃だけを見て「安い」と思っていても、共益費を加えると想定より高くなる場合があるため、必ず「家賃+共益費」で月額の合計額を確認する必要がある。
駐車場・駐輪場の使用料
車やバイクを所有している場合、別途「駐車場代」が発生する。マンション敷地内に駐車場がある場合でも、使用するには月額契約が必要で、費用はエリアや立地によって異なる。
都市部では月額2万円を超えることもある一方、郊外では5000円以下のこともある。機械式駐車場の場合は車種制限や操作の手間があるため、事前に使い勝手も確認しておくべきである。
また、自転車やバイクの駐輪も「月額利用料」が発生することがある。無料と書かれていても、台数制限や申請手続きが必要なことがあるため、注意しておきたい。
インターネット利用料
「ネット無料」と記載された物件であっても、回線の品質や通信速度に満足できない場合、自分で別のインターネット回線を契約する必要があることがある。その場合、月額4000円から6000円程度の利用料が発生する。
また、「ネット無料」とは建物全体で契約された共有回線を使用する方式であり、通信が混雑して使いづらいケースもある。快適な通信環境を求める場合、追加で費用がかかることを想定しておく必要がある。
個別契約が可能かどうかは、物件の配線状況や貸主の許可によって異なるため、契約前に確認しておきたい。
火災保険料(分割支払いの場合)
賃貸契約では、火災保険への加入がほぼ義務となっている。一般的には2年契約で1万5000円から2万円程度が相場だが、分割支払いを選ぶと月額で支払うことになる。
月払いにした場合、数百円から1000円程度の保険料が毎月の家賃と一緒に請求されることもある。契約内容や保険会社によって異なるが、月払いか一括払いかを選ぶ際に、自分の支払いスタイルに合わせて検討することが必要である。
家賃保証料(分割更新方式)
保証会社を利用する場合、初回保証料(家賃の30〜100%)に加え、1年ごとまたは毎月の更新料が発生することがある。
月額プランを選んだ場合、毎月1000円前後の費用が発生することがあり、家賃と一緒に引き落とされる。少額でも積み重ねると年間で1万円以上の支出になるため、意識しておくべきである。
また、保証会社によっては「更新料無料」の代わりに毎月の手数料が高めに設定されているケースもあるため、契約前に比較することが大切である。
水道光熱費(変動費)
水道、電気、ガスといった光熱費は、入居者が個別契約し、実際の使用量に応じて支払う。家賃には含まれないため、毎月の変動費として予算に組み込んでおく必要がある。
一人暮らしの場合でも、夏や冬の冷暖房使用によって電気代が1万円近くになることもある。ガスについても、都市ガスとプロパンガスでは料金に差があり、後者は割高であることが多い。
入居前には、どのガス種別か、給湯設備の効率はどうかなどもチェックしておくと、後の費用負担を予測しやすくなる。
その他の定期支出
物件によっては、以下のような項目が月額で発生することがある。
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町内会費(共用の防犯灯や清掃費などに充てられる)
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浄水器のレンタル代
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トランクルームや倉庫の使用料
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ペット飼育費(小型犬・猫などに対して月額の管理費)
これらは契約書や重要事項説明書に明記されていることが多いため、見落とさずに確認することが必要である。
月額の支出を把握することの重要性
入居前に家賃だけを基準に物件を選ぶと、実際に住み始めてから「想像以上にお金がかかる」と感じてしまうことがある。月々の支出が当初の想定よりも増えてしまえば、貯金や趣味、交際費に使えるお金が圧迫され、生活の満足度にも影響を与える。
そのため、契約前には家賃以外の支出をすべて洗い出し、「実際に毎月いくら払うことになるのか」を可視化することが、安心して新生活をスタートさせるための第一歩となる。