日本で部屋を借りる際、外国籍の方にとって最も不安になりやすいのが「自分のビザの種類で契約できるかどうか」という点である。実際、不動産会社や管理会社によっては、ビザの内容や在留期間をもとに入居の可否を判断することがある。
「働いているのに断られた」「書類は揃っているのに契約を断られた」という経験をする人もおり、その背景には“ビザの種類”が深く関係している場合がある。この記事では、日本の賃貸契約におけるビザと契約可否の関係、審査基準、そして契約をスムーズに進めるための準備について、事実に基づいてわかりやすく解説する。
日本の賃貸契約と「在留資格」の関係
日本で賃貸住宅を借りるには、日本国籍か在留資格を持つ外国人である必要がある。ビザはその人の在留目的や滞在可能期間を示すものであり、賃貸契約においては「この人が今後も継続的に日本に滞在するか」「安定した収入があるか」を判断する重要な材料とされる。
貸主としては、契約者がすぐに帰国してしまうリスク、家賃の滞納が発生したときに連絡がつかなくなるリスクを避けたいと考える。そのため、在留資格が不明確だったり、在留期間が短かったりすると、契約を断られる場合がある。
特に審査で注目されやすいビザの種類
就労系ビザ(技術・人文知識・国際業務など)
多くの外国人会社員が持っているビザ。安定した勤務先があることが前提となっているため、賃貸契約の審査にも比較的通りやすい。在留期間が1年や3年である場合でも、更新実績があれば信頼されやすい。
特定技能・技能実習
このビザは、就労先が変わったり、途中で帰国する可能性があるため、一部の貸主が慎重になることがある。また、本人名義での契約が難しく、会社名義や連帯保証人を求められることもある。
留学ビザ
学生として日本に滞在するビザ。親の仕送りやアルバイト収入などで生活している場合、安定した収入と見なされにくく、契約者本人ではなく親を保証人に立てるよう求められることがある。
配偶者ビザ・永住者ビザ
日本人や永住者と結婚している人や、長期滞在者向けのビザ。滞在の継続性が高く、賃貸契約には有利な条件とされる。保証人不要の物件でも契約しやすい傾向にある。
短期滞在ビザ
観光や短期滞在目的で発行されるビザ(通常は90日以内)。このビザでは、賃貸住宅の契約を断られることがほとんど。ホテルやマンスリーマンションなどを利用することになる。
管理会社や保証会社のチェックポイント
物件の審査を行うのは、貸主(オーナー)だけではない。多くの物件では、保証会社の審査も必要であり、この保証会社がビザの種類を非常に重視する。
保証会社がチェックするのは主に以下の点である:
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在留カードの有効期限
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就労・在学の証明(会社名や学校名)
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緊急連絡先の所在(国内にあるか)
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過去に家賃滞納などの履歴がないか
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母国語での意思疎通が困難でないか
書類がすべて揃っていても、連絡が取れないリスクが高いと判断されると、審査に通らないことがある。
契約をスムーズに進めるための準備
ビザの種類によってハードルがある場合でも、次のような準備をしておくことで、契約がスムーズに進む可能性が高くなる。
在留カード・パスポートの原本とコピーを用意
在留期限が近い場合には、更新予定があることを伝え、可能であれば更新申請の控えも提出する。
勤務先や学校の在籍証明書
働いている会社や通っている学校の連絡先がわかる書類を提出すると、信用度が高くなる。
緊急連絡先(日本国内)の提示
親族や会社の担当者、日本語が通じる保証人など、日本国内で連絡が取れる人の情報を提示する。
日本語でのやり取りが可能であることを示す
日常会話ができること、または通訳サポートがあることを伝えると安心材料になる。
契約前に確認したい質問例
物件を紹介されたとき、不安がある場合は次のような質問を不動産会社にしておくとよい:
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このビザで契約可能な物件ですか?
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保証会社の審査に影響しますか?
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在留期限が短い場合でも契約できますか?
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契約名義を家族にできますか?
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必要な書類や保証人は何が必要ですか?
ビザは「条件」ではなく「信頼」の判断材料
賃貸契約でビザが見られるのは、「差別」ではなく「リスクの評価」が目的である。契約においては、家賃をきちんと支払い、長期的に居住するかどうかを見極めるために、在留資格がチェックされている。
だからこそ、書類の準備や誠実な説明を通じて「信頼できる入居者」であることを示せれば、たとえビザの制約があっても、十分に契約が可能になるケースは多い。事前の準備と丁寧な対応が、スムーズな入居への最短ルートである。