日本で部屋を探している外国籍の方のなかには、不動産会社や物件情報のなかで「外国人不可」または「外国人入居は要相談」といった記載を見かけて戸惑った経験を持つ人もいるかもしれない。
表面上は日本での賃貸市場が開かれているように見えても、実際には「外国籍の方は入居できません」と断られるケースは今も少なくない。その背景には、偏見や差別とは別の“実務的な理由”が存在していることもある。
この記事では、「外国人NG物件」が存在する現実的な背景と、その判断がなぜ行われるのか、そして外国籍の方が部屋を借りるためにできる対応策について事実に基づいて解説する。
外国人NGとされるケースは実際にある
まず前提として、日本では法的に「国籍だけを理由に入居を断ること」は推奨されておらず、公平な取引が求められている。しかし現実には、「外国人には貸さない」「外国籍の方はお断り」という条件が存在する物件は今も一定数存在している。
不動産会社の担当者が明言することは少なくても、内見予約を進める中で「オーナーからNGが出ました」「保証会社の審査が通りませんでした」といった形で事実上の入居拒否が起こるケースがある。
なぜ「外国人NG」になるのか?主な理由
1. 言語の壁による意思疎通の不安
貸主や管理会社が日本語以外の言語に対応していない場合、連絡や注意、緊急対応がスムーズにできないことを不安視することがある。たとえば:
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ゴミ出しルールの説明が伝わらない
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家賃滞納の督促連絡が届かない
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設備トラブルの説明が伝わらない
言葉が通じないことで、トラブルが拡大するリスクを避けたいという考えが背景にある。
2. 生活習慣の違いによるトラブルへの懸念
文化や生活スタイルの違いによって、近隣住人との間にトラブルが起こる可能性があると考える貸主もいる。例として:
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騒音や夜間の活動時間が異なる
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料理のにおいや換気の仕方に差がある
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宗教的な習慣や装飾が共有部に影響する
過去にトラブルがあった建物では、「再発を防ぐ」名目で制限を設けているケースもある。
3. 契約・更新・退去時のリスク回避
契約書の内容を正しく理解してもらえないこと、帰国などにより連絡が取れなくなる可能性、保証人や緊急連絡先が不在であることなどが貸主側の不安要素になっている。
また、「突然退去して敷金を回収できなかった」「家賃未払いのまま連絡が取れなくなった」という経験を持つ貸主が、再発防止のために制限を設けることがある。
4. 保証会社の審査が通らないリスク
多くの物件で利用されている家賃保証会社は、外国籍の契約者に対して「在留カードの有効期限が短い」「勤務先が不安定」「連絡先が国外」などの理由で審査を否認するケースがある。
保証会社を通さないと契約できない物件では、保証審査が通らないだけで「事実上の外国人NG」となる場合もある。
実際には「断りたいから」ではなく「対応できないから」
これらの理由を見ると、「外国人だから断っている」というよりは、「対応体制が整っておらず、責任を持てないからお断りせざるを得ない」という背景が見えてくる。
貸主や管理会社の側にも、法的責任、修繕対応、近隣調整、契約の履行管理などを行う義務があり、それを果たす上で「万全な体制で対応できない」と判断した場合に、制限が設けられている。
外国籍の入居希望者ができる対策
1. 多言語対応の不動産会社を選ぶ
英語・中国語・ベトナム語などに対応している不動産会社では、貸主との調整や契約内容の説明もスムーズに行いやすく、入居までの確率が高くなる。
2. 日本語でのやり取りが可能な保証人を用意する
日本に住んでいる親族・知人・勤務先の上司などを「連帯保証人」や「緊急連絡先」として登録できると、貸主の安心感が高まる。
3. 滞在予定の期間や更新予定を伝える
在留カードの有効期限が短い場合でも、今後更新予定であることを説明すれば、リスクを下げられる。
4. 生活ルールを理解していることを示す
ゴミ出しルールの資料を読んでいる、生活音に配慮しているなど、住まい方のマナーを守る意識があることを不動産会社に伝えると、信頼につながる。
「外国人可」物件を探す上でのコツ
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外国人専門の不動産サイトを利用する
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地域の国際交流団体や支援NPOに相談する
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「外国人可」「留学生歓迎」などのキーワードで物件検索する
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シェアハウスや家具付きの短期賃貸を検討する(柔軟な対応が多い)
信頼は「説明」と「準備」で築ける
外国人NGという表示に触れたとき、ただ落胆するのではなく、「なぜその条件があるのか」「自分がどう信頼を示せるか」という視点を持つことで、状況は変えられる可能性がある。
契約とは信頼の上に成り立つものであり、言語や文化の違いを理由に断られるのではなく、「不安を与えない誠実な入居者」であることを示すことが、最良のアプローチとなる。