日本で賃貸住宅を探していると、「信用情報の審査があります」と言われることがある。クレジットカードを作ったことがない、ローンを組んだこともない、ましてや日本でのクレジットヒストリー(信用履歴)がまったくない外国籍の方にとっては、「自分は部屋を借りられないのでは?」という不安を感じるのも無理はない。
しかし、結論から言えば――クレジットヒストリーがなくても、日本で賃貸契約を結ぶことは可能である。
この記事では、日本の賃貸契約における信用情報の扱い方と、履歴がない人でも部屋を借りるためにできる具体的な対処法を紹介する。
なぜ信用情報が見られるのか?
日本の多くの賃貸物件では、保証会社を通じた入居審査が行われる。その際、申込者の支払い能力や信頼性を確認するために、下記のような情報がチェックされることがある。
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安定した収入があるか
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勤務先や就労形態
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過去に家賃滞納やクレジット事故があったか
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緊急連絡先や保証人の有無
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信用情報機関に登録されている履歴(クレジットカードやローンなど)
つまり、クレジットヒストリーはあくまで**「参考材料の一つ」であって、絶対条件ではない**。
日本でのクレジットヒストリーがないとどうなる?
外国籍の方や、日本で初めて生活を始める方の多くは、クレジットカードも銀行ローンも未経験であり、日本国内の信用情報機関に何も登録されていない状態である。
この場合、「信用履歴が悪い」のではなく、「信用情報が存在しない=“空白”」と見なされる。
これは審査上のマイナス評価ではないが、「情報が少ない=判断材料が少ない」という意味では、不利に働くこともある。そのため、他の面で信頼性を示すことが大切になる。
クレジットヒストリーがなくても賃貸できる3つの対処法
1. 保証会社の利用で補う
現在の日本では、家賃保証会社を通じて契約する物件が主流になっており、保証会社が審査を行う際には、勤務先や収入、在留カードの期限、提出書類の正確さなどが重視される。
多くの保証会社は「信用情報が白紙」であっても、以下の条件がそろっていれば契約可能としている:
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在留カードが有効
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勤務先または安定収入がある
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緊急連絡先が日本国内にある
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支払い能力がある(家賃は月収の3分の1以下など)
保証会社によっては外国籍専門の審査部門を持っているところもあり、言語や生活事情への理解がある。
2. 信頼を示す「補足情報」を用意する
信用情報がないこと自体は問題ではないが、「この人はきちんと責任を果たせる」と貸主・保証会社に思ってもらえる材料を準備すると、審査がスムーズになる。
たとえば:
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雇用契約書や給与明細
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内定通知書(就職予定の方)
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学校の在籍証明書(留学生)
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日本の銀行口座の残高証明
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緊急連絡先の身元明示(日本語対応可能な家族・上司など)
さらに、「家賃の数か月分を前払いしたい」「敷金を多めに預けてもよい」といった交渉も、有効な信用補強手段になることがある。
3. クレジット履歴が不要な物件を選ぶ
不動産会社によっては、そもそも信用情報機関への照会を行わない保証会社と提携していることもある。また、下記のような物件は比較的契約がしやすい。
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家具付き賃貸・マンスリーマンション
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シェアハウス・外国人専用アパート
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敷金・礼金ゼロで、保証人も不要な物件
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家主が外国籍入居者に慣れている物件(都市部中心)
このような物件では「生活を始めるための入り口」として契約し、数ヶ月暮らしながら銀行口座や在留記録を整えていくというステップも現実的である。
クレジットカードを作って履歴を育てるのも一案
中長期的に日本で暮らす予定がある場合は、早いうちにクレジットカードを作成し、日本での信用履歴をつくっておくのも有効な対策である。
ただし、外国籍の方が初めて日本でカードを作るには、以下のような条件を満たしておくと有利である。
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すでに口座がある日本の銀行と提携しているカード会社を選ぶ
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定職に就いている、または学校に在籍している
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電話番号・住所が安定している
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奨学金や収入証明などの提出が可能
信用情報は一朝一夕で形成できるものではないが、家賃の引き落としや公共料金の支払いをきちんと続けていくことで、徐々に信頼が構築されていく。
信用情報がなくても「信頼」はつくれる
クレジットヒストリーがないことに引け目を感じる必要はない。日本での生活が初めてであれば、それはごく自然な状態であり、多くの貸主や保証会社もそのことを理解している。
重要なのは、「情報がない」ことをカバーできるような誠実さと準備を見せること。書類の正確性、連絡のスピード、丁寧な姿勢など、小さな信頼の積み重ねが審査通過への一歩となる。