2025/06/19
共益費と管理費の違い、わかりますか?

日本で賃貸住宅を探していると、家賃の欄に「○万円+共益費○千円」「管理費込み」など、さまざまな表記があるのを目にする。中には、「共益費」と「管理費」の両方が記載されている物件もあり、「この2つはどう違うのか?」「なぜ両方かかるのか?」と疑問を感じた人も多いはず。

実は、「共益費」と「管理費」は似ているようで目的や中身が微妙に異なっている。どちらも「家賃以外の毎月かかる費用」ではあるが、それぞれの意味を理解しておくと、無駄な出費や誤解を防ぐことができる。

この記事では、「共益費」と「管理費」の違いと、それぞれが何に使われているのかを、具体的かつ実用的な視点でわかりやすく解説する。


結論:大きな違いはないが、目的に若干の違いあり

まず結論を言えば、**共益費も管理費も「家賃とは別に支払う維持費用」**であり、法律的には明確な区分はされていない。不動産会社やオーナーが慣習的に使い分けているケースがほとんどである。

ただし、実務的には以下のような傾向で使われていることが多い:

項目 共益費 管理費
対象範囲 建物の共用部分(廊下・エントランスなど)の維持管理 建物全体の管理や管理会社への委託費用
使われ方 清掃・電気・ゴミ回収・設備維持など 管理人の人件費・点検・管理会社報酬など
請求主体 オーナーまたは管理会社 管理会社が明確に設定しているケースが多い
表記の傾向 アパート・低層物件に多い マンション・管理委託物件に多い

共益費とは何か?

共益費は、その名の通り「共に益する費用」、つまり建物の住人全員が使う共用部分を維持するための費用である。

主に含まれる内容:

  • 共用部の電気代(廊下・エントランスの照明など)

  • 清掃費(廊下、階段、ゴミ置き場など)

  • ゴミ収集や分別管理

  • 植栽や外構の手入れ

  • エレベーターの保守点検(ある場合)

特徴:

  • アパートや小規模マンションで使われることが多い

  • 建物の設備レベルによって金額が安い(数千円程度)


管理費とは何か?

管理費は、建物の運営・管理を行うためにかかる人件費や事務費用などを含む、より広範囲な費用項目である。

主に含まれる内容:

  • 管理会社への委託費(管理報酬)

  • 管理人の人件費(巡回または常駐)

  • 設備点検(防火設備・水道・屋上など)

  • 建物修繕積立に関連する一部費用

  • 防犯カメラやオートロックの維持管理

特徴:

  • 分譲賃貸マンションやタワーマンションなど、高機能物件で使われることが多い

  • 金額は共益費より高めに設定される傾向がある(1万円以上の場合も)


両方かかる場合はどうなる?

物件によっては、「家賃8万円+共益費3,000円+管理費2,000円」といったように、両方が別々に記載されていることもある。この場合、それぞれの目的で費用が細かく設定されていると考えられる。

ただし、合算されて“管理費等”という形で一括表示されることも多いため、月額の総支払額を把握することが何より重要である。


「込み」の表記に注意

不動産広告やサイトでは「管理費込み」「共益費込み」と書かれていることがあるが、その意味は「家賃に含まれていて、別に支払う必要がない」ということを示している。

例:

  • 家賃9万円(管理費込み)
    → 実質的には「家賃8万5千円+管理費5千円」といったケースもある

見かけの家賃が高くても、管理費込みなら実質は安いという可能性もあるため、トータルの支払い金額で比較することが大切。


共益費・管理費を“節約”することはできるのか?

基本的に、共益費・管理費は契約で定められている固定額であり、交渉や削減は難しいのが現実。ただし、以下のような工夫で「実質的にコストを抑える」ことは可能。

▶ 家賃+共益費・管理費の合計で比較する

→ 家賃が安くても、管理費が高ければ支出は大きくなる

▶ 管理サービスの中身を見て判断する

→ 例えば「ゴミ出しが24時間可能」「管理人常駐」「宅配ボックス付き」など、金額に見合うメリットがあるかどうか

▶ 「込み」の物件を優先的に探す

→ 管理費が“込み”であれば、初期費用や月々の支払いがシンプルになる


大事なのは“家賃以外”の出費にも注目すること

部屋を探すとき、多くの人は「家賃」だけに目がいきがちだが、**共益費や管理費も含めた月額費用こそが、毎月の負担の“本当の金額”**である。

たとえ家賃が安く見えても、管理費や共益費が高ければ意味がない。逆に、管理費が高くても充実した設備やサービスが受けられるのであれば、快適な生活のための必要経費とも言える。

「共益費」「管理費」の違いを正しく理解することは、物件選びの“本質”を見抜く力にもつながる。賃貸契約の前に、ぜひこの知識を役立ててほしい。