2025/06/19
防音性能の落とし穴|床・壁の素材でここまで違う

「静かな部屋に住みたい」「隣人の生活音が気になる」
住まい選びで“音の問題”は、入居後に後悔しやすいトラブルの上位に挙げられる。しかし、「鉄筋コンクリートだから安心」「角部屋だから静か」…そう思って契約しても、実際に住んでみると、思っていたほどの防音効果が得られないケースも多い。

なぜこうした“防音の落とし穴”が起きるのか?
それは、建物の構造だけでなく、床材・壁材・間取りといった細部の素材や仕様が、防音性に大きく影響しているからである。

この記事では、賃貸住宅の「防音性能」の実態を、構造と素材の観点から解説し、静かに暮らしたい人がチェックすべきポイントを具体的に紹介する。


防音性能は「構造」だけで判断してはいけない

建物の構造には、主に以下の3つがある:

  • 木造(W造)

  • 軽量鉄骨造(S造)

  • 鉄筋コンクリート造(RC造)

一般的には、RC造が最も遮音性が高く、木造は低いとされているが、実際の住み心地は**「床・壁の素材や厚み」「施工精度」によって大きく左右される**。

つまり、「RC造だから静か」ではなく、「RC造+二重床+厚壁」でなければ、思ったほどの防音性は得られない。


床材が違うだけで、これだけ音が変わる

フローリング(直張り)

もっとも多く見られる素材。見た目がきれいで掃除もしやすいが、遮音性はあまり高くない。足音や椅子を引く音が下の階に響きやすい。

クッションフロア(CFシート)

ビニール系素材で、若干のクッション性あり。軽い衝撃音は吸収しやすいが、重量のある音(家具の落下など)は伝わる。

カーペット

吸音性に優れるため、防音目的としては最も効果的。ただし掃除やダニ対策が必要。

二重床構造

防音性を最も高める床仕様。床材と下地の間に空間を設けることで、振動音や足音を大幅に軽減できる。高級マンションや分譲仕様の賃貸物件で採用されることが多い。


壁材・厚みでも「隣の音」が変わる

石膏ボードのみの壁

多くの賃貸アパートでは、薄い石膏ボード2枚で仕切られているだけのことがある。これでは、くしゃみ・話し声・TVの音などがはっきり聞こえる。

二重壁構造(間に空間がある)

隣室との間に空気層(間柱)や吸音材が入っている構造では、音の伝わりはかなり抑えられる。

コンクリート打ちっぱなしの壁

音を通しにくい一方で、**反響しやすい(音が響く)**というデメリットもある。音が「漏れない」だけで「静か」になるわけではない点に注意。


天井・換気口・排水音にも注意を

防音性能は、床と壁だけで決まるものではない。

天井裏の構造

天井もまた、隣室や上階と空間的に接している部分。断熱材が入っていなければ、話し声や足音が響く。

換気口・エアコンのダクト

換気扇や換気口のダクトが隣室とつながっていると、声や生活音が「管を通って」聞こえることがある。

排水管の音

キッチンやトイレ、洗面所の排水管が直結していると、水を流す音が深夜でも響く。特に鉄骨・木造物件では要注意。


防音性が高い物件の見分け方【内見時チェック】

チェックポイント 具体的な見方
壁を軽くノックする コンコンと軽い音なら薄壁の可能性大。低くて鈍い音なら厚壁の可能性あり。
天井・床を踏んでみる 振動が伝わる感覚があるかどうかを確認。特に足音に注意。
隣室との距離 隣室の窓や玄関が近すぎないか、間取り図で確認。
家具の配置 家具で壁を埋めれば多少の防音効果が出る。家具を置く場所に余裕があるか。
防音サッシの有無 遮音等級の高いサッシが使われているか、二重窓かどうかを確認。

防音トラブルを避けるための住まい選びアドバイス

  1. 最上階・角部屋を選ぶ
     → 上階・片側からの音を減らせる

  2. 分譲仕様の賃貸を探す
     → 分譲マンションを賃貸に出している場合、構造や素材がしっかりしていることが多い

  3. 築浅より“仕様”を確認する
     → 新しい=静かとは限らない。施工会社や建築構造に注目

  4. 木造・鉄骨なら上下階に注意
     → 1階に住む・上階が店舗や空室だと静かになりやすい


静かな暮らしは「構造+素材」の総合判断で

防音性能は「RC造かどうか」だけでは決まらない。壁や床の厚み・素材・施工精度・共用設備の配置までをトータルで見て初めて、本当の住み心地が見えてくる。

見た目や築年数に惑わされず、「自分の音の許容度」と「物件の防音仕様」が合っているかを冷静に判断することが、静かで快適な暮らしへの最短ルートである。