「駅から徒歩5分」「駅徒歩3分の好立地」──
物件情報でこうした文言を見ると、誰しも「便利で通勤にラク」と感じるものだ。
しかし実際に住んでみると、「思ったほど快適じゃなかった」「騒音がひどい」「買い物が不便だった」という声も少なくない。
駅近=便利、とは限らない。
この記事では、駅から近い物件を選ぶ際に見落とされがちなポイントと、周辺環境を正しく評価するための具体的なチェック視点を紹介する。
駅近物件の“盲点”とは?
1. 駅に近いほど「人と騒音」も近い
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駅前には飲食店・コンビニ・居酒屋・カラオケ・パチンコ店などが集中している
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夜間も人通りが絶えず、酔客の話し声やタクシーのアイドリング音が響く
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始発駅や終電近くの時間帯に、電車のアナウンス音やホームの放送が部屋まで届くこともある
→ 夜の静けさを求める人には不向きなケースも。
2. 実際には「通り道」「生活圏」として使いづらいことも
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駅前は店舗が多くても、スーパーやドラッグストアがなく、買い物が不便
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駅までの道に歩道がなく、通学・通勤時に危険を感じる
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駅近でも高低差(坂道)や踏切、狭い道を通る必要があるケースも
→ 地図だけでは判断できない“歩行のしやすさ”が生活に影響。
3. 駅近=家賃が高くなる傾向
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同じ広さでも、駅から徒歩3分と徒歩15分では1〜2万円の家賃差がつくことも
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駅近プレミアムが反映されるが、必ずしも生活の快適さに比例するわけではない
→ 築年数・設備・間取りとのバランスが悪いこともある。
駅近物件を選ぶ際に見るべき周辺環境ポイント
✅ 昼と夜の「音環境」を確かめる
内見は日中が多いが、実際に住むのは夜。
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駅前ロータリーや繁華街に面していないか
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ゴミ収集車・新聞配達の音が響く時間帯はいつか
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警察署や病院が近く、サイレンの音が頻繁ではないか
→ 夜の時間帯に一度現地を歩くことで、静かさがわかる。
✅ スーパー・生活施設の位置関係
駅前に店は多くても、「コンビニしかない」「食品は高めの専門店だけ」ということも。
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スーパー(できれば夜遅くまで営業)の有無
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ドラッグストア・100円ショップ・クリーニング店の距離
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銀行ATM・郵便局・病院など、生活機能が徒歩圏にあるか
→ “通勤には便利”と“生活には便利”は違う。
✅ 駅までの道の安全性・快適性
「徒歩5分」と書いてあっても、
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歩道が狭い or ない
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夜は街灯が少なく暗い
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駅前に横断歩道がなく、遠回りになる
といった環境では、通勤のストレスが増すだけでなく、防犯上の不安も高まる。
✅ 駅から近い=踏切・線路の近さもチェック
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線路沿いの場合、電車の通過音・振動・踏切音が想像以上に大きい
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特に在来線・貨物線・複数路線が通る地域は要注意
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バルコニー側が線路に面していると洗濯物への鉄粉・騒音問題も
駅から少し離れた物件が“穴場”になることも
駅近=メリットばかりではないからこそ、「駅徒歩10〜15分圏内」で、以下のような要素がそろった物件は“掘り出し物”になりうる。
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住宅街にあり、静かで落ち着いた環境
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日用品の買い物施設が徒歩5分圏内に揃っている
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バスや自転車で駅へアクセスできる道が安全で快適
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家賃相場が駅近より1万円以上安いことも
→ 多少歩く分、広さ・設備・環境のトータルバランスが高い物件も多い。
よくある誤解と見直したい視点
よくある思い込み | 本当に見るべき視点 |
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駅近なら生活も便利 | スーパー・病院・銀行などの生活機能があるか |
徒歩5分以内=近い | 実際の道のりに坂・段差・信号がないか |
駅に近い=静か | 飲食店・交通量・人通り・深夜営業店舗がないか |
駅近物件は「便利」だけでなく「快適か」を見極めよう
駅からの近さは確かに魅力的な条件の一つだが、その“近さ”が自分の暮らしにどう影響するかは、立地だけでは測れない。
便利=騒がしい、便利=高コスト、便利=生活機能が限られる
という“副作用”もあるからこそ、周辺環境・騒音・生活導線まで含めて判断する目が重要になる。
本当に快適な暮らしは、「駅からの距離」だけで決まるものではない。
実際に歩いて、見て、感じてみること。
それが、後悔のない物件選びの第一歩だ。