2025/06/17
契約書の禁止事項は必ず目を通すべき理由

賃貸契約書に目を通すと、後半に出てくる「禁止事項」の項目。
中には「そんなことまで書いてあるの?」というような細かいルールが列挙されていて、つい流し読みしてしまう人も少なくない。

しかし実は、この“禁止事項”こそが、入居後のトラブルを未然に防ぎ、自分を守る大切な情報でもある。
違反してしまった場合には、契約解除や損害賠償、強制退去のリスクも生じる可能性があるため、契約時にしっかりと内容を確認しておく必要がある。


「禁止事項」はなぜ明記されているのか?

禁止事項とは、物件のオーナーや管理会社が、入居者に守ってもらいたい具体的な行動の制限事項を指す。
これは「契約書の一部」であり、法的拘束力がある。

目的は以下の通り:

  • 物件の安全性や衛生を保つ

  • 他の入居者とのトラブルを防ぐ

  • 建物の設備・構造を保全する

  • オーナーの資産価値を守る

入居者同士が快適に暮らすための最低限のルールとして設定されている。


よくある禁止事項の具体例

契約書や重要事項説明書に記載されやすい禁止事項の一例を挙げる:

禁止事項の項目 具体的内容
ペットの飼育 「小型犬含めすべて不可」「金魚はOK」など物件ごとに異なる
楽器の演奏 ピアノやギターなどの楽器演奏が全面禁止または時間制限あり
改造・DIY 壁や床に穴を開ける行為、塗装、棚の設置など
サブリース・無断転貸 他人に貸す、民泊利用、友人を長期宿泊させるなど
喫煙 室内・共用部・バルコニー含め全面禁煙のケースも
ゴミ出しルール違反 分別・曜日を守らない行為は地域トラブルの原因に
騒音・迷惑行為 深夜の生活音、大音量での音楽、共用部の占拠など

これらはすべて、違反すると「契約違反」として厳しく対応される可能性がある


“知らなかった”では済まされない

契約書の禁止事項に違反した場合、以下のような対応が取られる可能性がある:

  • 注意・警告(書面や電話)

  • 是正命令・改善要求

  • 契約解除(=強制退去の通知)

  • 敷金の返還拒否・違約金の請求

  • 民事訴訟(損害賠償請求)

特に「ペットをこっそり飼っていた」「ルームシェアを無断で始めた」などは、証拠が残るため発覚しやすく、契約解除に直結するケースもある。


見落としやすい“曖昧な表現”にも注意

契約書には、以下のような抽象的な表現も使われることがある:

  • 「近隣住民に迷惑となる行為の禁止」

  • 「物件の品位を損なう行動は不可」

  • 「その他、管理会社が不適当と判断する行為」

これらは一見あいまいだが、実際には騒音・悪臭・共用部の汚れなど、日常的なマナー違反にも適用されうる
入居者間トラブルが発生した際、管理会社がこの条項をもとに行動することもある。


契約前に確認しておくべき質問リスト

禁止事項の解釈や制限レベルは物件ごとに異なるため、契約前に必ず確認すべき質問項目をまとめておく:

  • ペット:動物の種類や数に制限はありますか?

  • 楽器:電子ピアノやスピーカーは使用可能ですか?

  • バルコニー:洗濯物以外の利用は可能ですか?(喫煙・植物など)

  • DIY:粘着テープやフックの使用は原状回復の対象になりますか?

  • 訪問者:友人の宿泊に制限はありますか?

  • 共有部分:自転車の台数、ベビーカーの置き方などルールは?

→ 質問はメールや書面に残しておくと、万が一の際に証拠として役立つ。


トラブル回避のためにできる3つのこと

  1. 契約前に「禁止事項」の全文を読み、わからない表現は確認する

  2. 口頭説明ではなく、必ず文書で内容を確認・保存する

  3. 入居後もルールブックや掲示物に定期的に目を通す

特に外国籍の入居者にとっては、日本独自の生活マナーや共用ルールが文化的に異なることも多く、注意が必要


ルールは自分を守る“防波堤”にもなる

禁止事項は、ただの“制限リスト”ではない。
守ることで自分の居住権を守り、快適な暮らしを維持するための最低限のルールである。

ルールを破れば、契約解除や損害賠償のリスクがある。
だが逆に言えば、ルールを守ることで、トラブルが起きたときに自分の正当性を主張する根拠にもなる。

賃貸契約書を読むときは、「家賃」「期間」「更新」だけでなく、“禁止事項”のページにも必ず目を通すこと。
それが、安心して長く住める賃貸生活への第一歩になる。