一人暮らしで始めた賃貸生活。
時間が経つうちに、「恋人と一緒に住みたい」「家族を呼び寄せたい」「友人とルームシェアしたい」と考えるようになることもある。
しかし、ここで注意したいのが**“同居人を追加する場合は、原則として貸主または管理会社の承諾が必要”**だということ。
契約者名義のまま、無断で同居人を増やすことは契約違反となる場合があり、最悪の場合は契約解除や退去請求につながる可能性もある。
この記事では、賃貸契約における「同居」の定義と、同居人追加の際に必要な手続きや注意点、よくある誤解を、実務に基づいて整理する。
同居人と契約者の違い
まず前提として、賃貸契約に登場する「契約者」「同居人」「居住者」の違いを明確にしておく。
用語 | 意味 | 権利・義務 |
---|---|---|
契約者(借主) | 賃貸契約書に記載され、家賃を支払う本人 | 家賃支払義務・原状回復義務・契約更新の権利 |
同居人 | 契約者と一緒に住む人物(家族や恋人など) | 契約上の責任なし(が、居住を許されている立場) |
無断居住者 | 事前承諾なく勝手に住んでいる人 | 契約違反とみなされる |
→「住んでいる=契約関係がある」とは限らないため、ルールに従った届け出が必要になる。
なぜ同居人の追加に許可が必要なのか?
多くの賃貸契約書には、以下のような文言が含まれている:
「借主は、貸主の承諾なく第三者を居住させることはできない」
「入居者の変更・追加がある場合、事前に届け出て承諾を得ること」
この条項の目的は以下の通り:
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物件の利用目的(居住用)の適正維持
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建物の安全・設備使用量の把握(電気・水道・ゴミ処理など)
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契約内容(人数・使用方法)の逸脱によるトラブル防止
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火災保険・保証契約との整合性維持(登録人数によって補償範囲が変わる)
同居人追加の主なケースと対応例
ケース | 必要な手続き・対応 |
---|---|
配偶者やパートナーとの同棲を始める | 管理会社へ申請書提出、承諾を得る。収入証明や本人確認書類が必要なことも |
実家の家族を呼び寄せる | 家族構成の申請が必要。自治体に住民票を移す前に承諾を得るべき |
友人とのルームシェア | 契約形態の変更(複数契約者にする)や保証会社の審査が再度必要になる可能性 |
留学生が母国の親族を短期滞在させる | 30日以内の短期であっても、管理会社に相談し記録を残すべき |
よくある誤解と注意点
❌「一人暮らし契約でも数日なら泊まってもOKでしょ?」
→ 一時的な来客は問題にならないが、頻繁な宿泊や長期滞在は“実質的な同居”とみなされる可能性がある。
特に郵便物の受け取り、住民票の移動、生活費の折半などがある場合は、管理会社に報告すべき。
❌「契約者に責任があるんだから、同居人のことは関係ない」
→ 同居人が起こした騒音・迷惑行為でも、契約者が責任を問われる。
契約書には「借主およびその関係者の行為によって発生した損害については借主が責任を負う」と明記されていることが多い。
❌「届け出なんてあとでも大丈夫」
→ 後から発覚すると、「無断転貸」や「契約違反」と見なされ、最悪の場合は退去命令や契約解除につながる。
事後報告ではなく、事前承諾が原則である。
手続きの流れ(一般的な例)
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管理会社へ同居希望の旨を相談する
→ 電話やメールで概要を伝え、必要書類を確認 -
所定の申請書を提出
→ 同居人の氏名・続柄・年齢・連絡先などを記入
→ 本人確認書類や収入証明を求められることもある -
保証会社の再審査が行われる場合もある
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貸主(オーナー)または管理会社の承諾書を受領
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住民票の移動などは承諾後に行う
特約がある物件では特に要注意
契約書に「単身者専用」「ファミリー不可」「ルームシェア不可」などの特約条項がある場合、同居自体が認められないこともある。
この場合は、同居人の追加ではなく、新規契約として再審査・再契約が必要となることも。
契約前に確認したいチェックポイント
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契約書に「同居」「転貸」「名義変更」の取り扱いについて明記があるか
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保証会社や火災保険の加入条件に「人数上限」が設定されていないか
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同居希望者が収入のある成人か扶養家族かで条件が変わるか
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家賃・管理費に追加費用が発生するか
「一緒に住みたい」と思ったら、まず契約書を確認し、事前に管理会社へ正式に届け出ること。
それが、信頼関係を壊さず、快適な同居生活を始めるための第一歩となる。
ルールに則った手続きを踏めば、トラブルは未然に防げる。