2025/06/28
茨城・袋田の滝と日本三名園“偕楽園”で感じる季節の美

四季のうつろいを体感できる旅先として、茨城県には見逃せない名所がいくつか存在する。なかでも奥久慈エリアにある「袋田の滝」と、水戸市の「偕楽園」は、自然と文化の両面から日本らしい美しさを味わえる場所として知られている。どちらも季節ごとに異なる表情を見せることから、訪れる時期によって印象が大きく変わるのが特徴だ。

袋田の滝は日本三名瀑の一つに数えられ、落差120メートル、幅73メートルの大スケールを誇る。最大の見どころは、その流れが岩肌を四段に渡って流れ落ちる迫力ある景観で、「四度の滝」とも呼ばれる由来となっている。春は新緑、夏は清涼感、秋は紅葉、冬は氷瀑と、四季それぞれが主役になり得る。

滝の正面にはトンネルが整備されており、展望台からは間近にその姿を望むことができる。音と風をともなって落ちる水の勢いは、写真では伝えきれないほどの臨場感をもたらす。秋の紅葉シーズンや、1月から2月にかけて凍結する「氷瀑」は特に人気が高く、早朝や平日を狙えば混雑を避けて静かにその景色を堪能できる。

袋田の滝から車で1時間半ほど南に下ると、日本三名園の一つに数えられる「偕楽園」がある。金沢の兼六園、岡山の後楽園と並び、格式ある庭園として評価されているが、その成り立ちはやや異なる。江戸時代、水戸藩の藩主が「民と楽しむ」という理念のもとで造園したことから、名前にも“偕(とも)に楽しむ”という意味が込められている。

偕楽園といえば梅の名所として有名で、早春には約100種3000本の梅が園内を彩る。2月中旬から3月にかけて行われる梅まつりは、香り高い花に包まれながら散策が楽しめる風物詩となっており、カメラ片手に訪れる人の姿が絶えない。梅のほかにも、桜やつつじ、萩、紅葉など、季節ごとに植栽された木々が園全体を美しく変化させていく。

好文亭と呼ばれる木造建築は、園内でひときわ存在感を放つ。藩主の休憩や文人たちの交流の場として使われたこの建物は、二層構造で眺望も良く、風景を愛でる場としても見応えがある。畳に座り、広がる庭園を静かに見渡す時間は、日常とはまったく異なる心の静けさをもたらす。

袋田の滝と偕楽園、このふたつを巡る旅は、目で楽しみ、肌で感じ、心を整える体験となる。自然の力強さと、人の手が生み出した美の調和。それぞれが持つ魅力が補い合いながら、訪れた人に“日本の四季”という本質を深く伝えてくれる。