標高およそ1200メートル、山梨県北部に広がる清里・八ヶ岳エリアは、避暑地として高い人気を誇る高原リゾート。東京方面から車で2〜3時間とアクセスもよく、真夏でも涼やかな風が吹くこの地は、自然の中で静かに過ごす夏休みにぴったりの場所だ。
かつて清里は「日本のスイス」と称され、多くのリゾートホテルやペンションが立ち並ぶ観光地として栄えてきた。現在もその魅力は色あせておらず、美しい牧草地や白樺林、アルプスを思わせる風景の中でのんびりと過ごす時間が、都市生活に疲れた心を癒してくれる。
清里駅周辺には「清泉寮」や「萌木の村」など、自然と文化を融合させた施設が点在している。清泉寮のソフトクリームは定番の名物で、濃厚ながら後味はさっぱり。展望テラスからは八ヶ岳連峰を一望でき、開放感あふれる風景の中で地元産の食材を使ったカフェランチも楽しめる。
周辺の森では、初心者向けのトレッキングコースも充実している。標高が高いため夏でも空気がひんやりとしており、木漏れ日の中を歩くだけで心地よいリズムが生まれる。特に「吐竜の滝」や「八ヶ岳自然ふれあいセンター」周辺は、ファミリー層にも人気で、歩きやすい道が整備されている。
また、この地域は天体観測にも最適なロケーション。空気が澄み、街明かりの影響が少ないため、夜空には満天の星が広がる。標高1900メートルの「野辺山宇宙電波観測所」では、子ども向けの宇宙教室や見学ツアーも開催されており、学びと感動が交差する特別な体験が待っている。
宿泊はログハウス風のコテージや高原リゾートホテル、アートを取り入れたデザイン宿などバリエーションが豊富。いずれの宿も自然との距離が近く、朝は鳥のさえずり、夜は虫の音が心地よいBGMとなる。テラスで朝食をとったり、焚き火を囲んだりと、都会では味わえないリズムが日常をゆるめてくれる。
夏の八ヶ岳は、ただ涼しいだけでなく、“暮らすように旅する”スタイルにふさわしい要素が揃っている。食、自然、アート、教育──そのどれもが高原の空気に包まれて、特別ではないけれど、確かに贅沢な夏の思い出となる。