長野県中部に位置する諏訪エリアは、歴史と自然が共存する神秘的な旅先として知られている。中心には霊峰・八ヶ岳を望む諏訪湖が広がり、その周辺には全国でも有数の古社「諏訪大社」が四社体制で鎮座している。神聖な空気と温泉、そして湖をめぐる静かな時間が、2泊3日の旅をより深く豊かなものにしてくれる。
旅の出発はJR中央本線で上諏訪駅へ。新宿から特急で約2時間半とアクセスは良好。到着後、まず訪れたいのが諏訪大社の上社本宮。荘厳な木造の社殿は、自然崇拝の名残を色濃く残しており、周囲の木立や空気そのものに神聖さが宿るような空間となっている。境内には神木や御柱といった神事にまつわるシンボルが並び、日本最古級の神社のひとつとしての存在感を放っている。
2日目は四社めぐりへ。諏訪大社は「上社本宮」「上社前宮」「下社秋宮」「下社春宮」の四社から構成され、それぞれが諏訪湖を囲むように配置されている。車やレンタサイクルを利用すれば、無理のないスケジュールで1日ですべてを巡ることができる。各社でいただける御朱印を集めるのも、この地ならではの楽しみのひとつだ。
移動の合間には、諏訪湖畔で一休み。遊歩道が整備されており、湖面を渡る風に吹かれながらの散策は心を穏やかに整えてくれる。夏には花火大会、冬には御神渡り(湖面が凍結して亀裂が走る現象)が見られることもあり、四季を通じて訪れる価値のある場所だ。周囲には美術館や足湯も点在し、文化と癒しがゆるやかに共存している。
夜は、湖畔の温泉宿で過ごす時間が旅のハイライトとなる。諏訪は古くから温泉地として知られており、アルカリ性のなめらかな湯は肌をやさしく包み込む。露天風呂からは諏訪湖や星空を望むことができ、静かな時間がゆったりと流れる。
3日目には、地元のグルメを楽しむのも忘れたくない。信州そばや、諏訪湖で獲れる川魚料理、さらには地酒の蔵元巡りなど、味覚を通じて地域の深さを感じることができる。特に、諏訪五蔵と呼ばれる日本酒の酒蔵は、徒歩で回れる距離に集まっており、利き酒を楽しむ大人の旅にもおすすめ。
諏訪の魅力は、観光地としての華やかさよりも、古くから受け継がれる信仰や自然とのつながりにある。静けさの中に力強さを秘めた土地の空気に触れ、心身を調える──そんな体験を求める人にとって、この2泊3日は、旅以上の意味を持つ時間となるはずだ。