岡山県倉敷市の南部に位置する鷲羽山(わしゅうざん)は、瀬戸内海と瀬戸大橋を一望できる絶景スポットとして知られ、地元の人はもちろん、写真愛好家や観光客にも人気の場所だ。そしてその麓には、国産ジーンズ発祥の地・児島があり、職人の技が息づく“ジーンズの聖地”として注目を集めている。雄大な自然とクラフト文化が交差するこの地域を巡る旅は、心を満たし、感性を刺激する特別な体験となる。
旅のスタートは、倉敷駅または児島駅から。車やレンタサイクルを利用すれば、海沿いの道を走る爽快感を味わいつつ、効率よく移動できる。まず訪れたいのが、瀬戸内海国立公園に指定されている「鷲羽山展望台」。標高133メートルの山頂からは、大小の島々が穏やかな海に浮かび、その上を堂々と横切る瀬戸大橋が美しいシルエットを描いている。
朝焼けや夕景の時間帯は、光と影が海と橋を染め上げる幻想的なひととき。とくに夕暮れ時には、オレンジから藍色へと変化する空に、橋のライトアップが映え、ドラマチックな風景が広がる。展望台にはベンチや遊歩道も整備されており、ゆったりと時間を過ごすことができる。
絶景を堪能したあとは、ジーンズの街・児島エリアへ。ここは日本で初めて国産ジーンズが製造された地であり、今も多くのデニムブランドや職人工房が集まっている。「児島ジーンズストリート」には、個性的なショップが軒を連ね、デニム製品や限定アイテム、オリジナルのクラフト雑貨などが並ぶ。
ストリートを歩けば、壁面のアートやジーンズをモチーフにしたベンチ、信号機の装飾まで、街全体が“デニムテーマパーク”のよう。体験型の工房では、自分だけのジーンズや小物を作ることもでき、旅の思い出をかたちに残すにはぴったりだ。
児島のジーンズは、縫製や加工技術の高さで世界的にも評価されており、買い物目的だけでなく「ものづくりの現場に触れる旅」としても価値がある。丁寧に織られたセルビッジデニムや、手作業で仕上げられる一本一本のジーンズには、職人たちの誇りと挑戦が込められている。
ランチには、地元の海産物を使った定食や、デニム色を模した見た目がユニークな“デニムバーガー”“青いソフトクリーム”などのご当地グルメも楽しみたい。少し遊び心のあるメニューが、旅の余白をやさしく彩ってくれる。
鷲羽山と児島ジーンズストリートを巡るこの旅は、自然の壮大さと人の手が生み出すクラフトの美しさ、どちらにも触れられる贅沢なコース。瀬戸大橋を背景に、空と海とデニムに出会う一日を、ぜひ歩いて感じてみてはいかがだろうか。