九州は日本屈指の温泉地として知られ、各地に個性豊かな宿が点在している。自然に囲まれた秘湯からラグジュアリーなリゾート型まで、そのバリエーションは全国でも随一。ここでは、泉質・眺望・サービスの三拍子が揃った“本当にすごい温泉宿”を厳選し、アクセスやベストシーズンもあわせて紹介する。
まず名湯の代名詞ともいえるのが大分県・由布院。JR由布院駅からタクシーで数分の立地に、源泉かけ流しの宿が集まる。朝霧に包まれる由布岳を望む露天風呂や、離れ形式の客室は静寂の中で贅沢なひとときを演出する。秋から冬にかけての朝は特に幻想的で、紅葉や霜景色との調和が美しい。
同じく大分の別府温泉は、多様な泉質が揃う点が特徴。鉄輪(かんなわ)エリアでは、蒸気を活用した地獄蒸し料理も楽しめ、宿泊と食体験が融合した滞在が可能だ。アクセスは大分空港またはJR別府駅からバスで30分ほど。冬場の湯けむり景観は、まるで絵画のような風情がある。
熊本県・黒川温泉は、山間にひっそりと佇む温泉街で、統一感ある和風の宿が連なる。宿泊者専用の入湯手形で複数の露天風呂を巡ることができ、温泉好きにはたまらない滞在スタイルとなっている。最寄りの阿蘇くまもと空港からはレンタカーが便利。春や秋の気候が穏やかな時期が歩きやすく、街並みとの相性も良い。
佐賀県・嬉野温泉は、美肌の湯として評価が高く、無色透明のとろみある湯が特徴。新幹線の新大村駅からバスで約40分とアクセスしやすく、洗練された旅館では陶磁器や地元料理といった文化体験もセットで楽しめる。特に冬場は、寒さを感じずに長湯ができるため人気が高い。
宮崎県・青島温泉は、南国のビーチリゾートと温泉が融合した珍しいエリア。空港から車で15分と利便性が高く、海を望む露天風呂付きの宿では、サーフィン帰りに湯に浸かるというライフスタイル的な滞在が可能だ。夏から秋にかけては海風が心地よく、温泉とレジャーの両立がしやすい。
長崎の雲仙温泉では、硫黄の香りに包まれた高原リゾートの雰囲気が漂う。標高が高いため夏でも涼しく、避暑地としても人気がある。長崎空港から島原半島を経由して約1時間半のアクセスで、山並みと霧に包まれた露天風呂は、まさに静けさの極みを感じさせる。
鹿児島県・霧島温泉は、桜島や錦江湾を遠望できる絶景露天風呂が揃っている。新幹線の霧島神宮駅からタクシーやバスでアクセス可能で、春の新緑と秋の紅葉が特に映える。硫黄泉や炭酸水素塩泉など種類も豊富で、温泉街全体の湯めぐりも楽しい。
九州の温泉宿は、自然と共にある時間を約束してくれる。移動のしやすさと季節感を意識しながら、自分の目的に合った滞在先を選ぶことで、旅そのものの価値が大きく変わってくる。湯に浸かるだけでなく、風景と空気も一緒に味わう。そんな滞在が、九州ならではの贅沢と言える。